講演情報
[VWS1-4]痔核ハイリスク症例へのLEは推奨されないのか?~ASA-PS分類別の合併症率検討~
大橋 勝久1, 大橋 勝英1, 佐々木 章公2, 太田 和美2, 北川 一智2 (1.大橋胃腸肛門科外科医院, 2.十全総合病院)
【はじめに】あらゆる痔核に対応できる結紮切除術(以下LE)は,基本手技であるがバリエーションも多く,習得に多くの経験を要する.また手技的困難症例やハイリスク症例などの治療困難症例にもしばしば遭遇する.困難症例に対しては安易な手技が選択されがちだが,逃げの一手では解決できない症例も多い.我々は困難症例でも積極的にLEを施行しており,ハイリスク症例の術後合併症リスクについて検討した.
【手術手技】痔核に応じた切離デザインが肝要で,全周性でも内外痔核の形態から必ず処理すべき痔核の領域が存在する.切離の入口である外痔核の処理こそ重要で,特に再発症例では癒着瘢痕により困難だが,筋層をイメージした剥離層をたどると痔核を固定する縦走筋が見えてくる.これを切離してゆくと直腸における固有筋膜のような膜状構造物が確認でき,切離することで痔核の血管成分(粘膜下層)が露出し,痔核組織の肛門管への固定性が消失する.痔核が「膜状」に柔らかく引き出されるので,膜化した痔核を緊張なく絹糸で結紮し,ドレナージ創も適宜半閉鎖や亜閉鎖する.痔核の程度に応じ,ALTAやMucopexyを併用する.
【方法】2015年1月から2024年3月までLE(他治療併用含む)を行った1504例を,ASA-PS low risk群(classI or II,1395例)とhigh risk群(classIII or IV,109例)にわけ,合併症発生率をχ2検定で検討した.
【結果】背景因子として,high risk群は有意に高齢で(53.7±17.5/74.4±9.2歳:low/highで表記し以下同様),抗血栓療法率が高かった(2.6%/70.6%).保存的止血を含む全出血,止血を要する出血,止血を除くClavien-Dindo gradeIII以上の合併症は,2.9%/6.4%(p=0.09),1.4%/3.7%(p=0.16),0.3%/1.8%(p=0.09)と,いずれも有意差を認めないがhigh risk群で高い傾向だった.
【考察】ハイリスク症例に対するLEは,有意差はないが合併症率が高い傾向にあった.ハイリスク群の7割が抗血栓薬の服薬下にあり,原疾患の悪化を懸念し最小限の休薬に努めていることが,後出血を起点とする合併症に影響していると考えた.
【まとめ】痔核ハイリスク群へのLEは合併症が生じやすい可能性がある.LEを控えるべきか,その場合はどのような治療がよいのかを議論する必要がある.
【手術手技】痔核に応じた切離デザインが肝要で,全周性でも内外痔核の形態から必ず処理すべき痔核の領域が存在する.切離の入口である外痔核の処理こそ重要で,特に再発症例では癒着瘢痕により困難だが,筋層をイメージした剥離層をたどると痔核を固定する縦走筋が見えてくる.これを切離してゆくと直腸における固有筋膜のような膜状構造物が確認でき,切離することで痔核の血管成分(粘膜下層)が露出し,痔核組織の肛門管への固定性が消失する.痔核が「膜状」に柔らかく引き出されるので,膜化した痔核を緊張なく絹糸で結紮し,ドレナージ創も適宜半閉鎖や亜閉鎖する.痔核の程度に応じ,ALTAやMucopexyを併用する.
【方法】2015年1月から2024年3月までLE(他治療併用含む)を行った1504例を,ASA-PS low risk群(classI or II,1395例)とhigh risk群(classIII or IV,109例)にわけ,合併症発生率をχ2検定で検討した.
【結果】背景因子として,high risk群は有意に高齢で(53.7±17.5/74.4±9.2歳:low/highで表記し以下同様),抗血栓療法率が高かった(2.6%/70.6%).保存的止血を含む全出血,止血を要する出血,止血を除くClavien-Dindo gradeIII以上の合併症は,2.9%/6.4%(p=0.09),1.4%/3.7%(p=0.16),0.3%/1.8%(p=0.09)と,いずれも有意差を認めないがhigh risk群で高い傾向だった.
【考察】ハイリスク症例に対するLEは,有意差はないが合併症率が高い傾向にあった.ハイリスク群の7割が抗血栓薬の服薬下にあり,原疾患の悪化を懸念し最小限の休薬に努めていることが,後出血を起点とする合併症に影響していると考えた.
【まとめ】痔核ハイリスク群へのLEは合併症が生じやすい可能性がある.LEを控えるべきか,その場合はどのような治療がよいのかを議論する必要がある.