講演情報

[R5-1]大腸癌根治切除術後の縫合不全の検討―免疫学的・栄養学的指標に注目して―

藤本 崇聡, 久野 恭子, 田村 公二, 永吉 絹子, 水内 祐介, 中村 雅史 (九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科)
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【背景・目的】大腸癌手術後の縫合不全に関する研究は多数報告されているが,まだ解明されていない点も多い.今回,大腸癌根治術後の縫合不全と免疫学的・栄養学的指標との関連性を明らかにすることを目的とした.
 【方法】2013年1月から2018年12月までに大腸癌根治切除術を受けた594例の臨床病理学的因子を後方視的に解析した.臨床病理学的因子と縫合不全との関係を検討した.また,栄養学的・免疫学的指標として,骨格筋量指数,骨密度,PNI,CAR,NLR,PLR,LMRを用いた.
 【結果】縫合不全は17例に認めた(2.9%).骨格筋量指数低値と骨密度低下を合併したオステオサルコペニア群(98例)は非オステオサルコペニア群(496例)と比べ有意に縫合不全が多かった(9.2% vs 1.6%,p<0.0001).一方,PNI,CAR,NLR,PLR,LMRは有意差を認めなかった(P=0.22,0.93,0.051,0.073,0.27).その他の因子も含め単変量解析では,男性,直腸,CEA高値,基礎疾患(心疾患,脳血管障害,肺疾患,糖尿病,ステロイド内服),腫瘍径50mm以上が縫合不全の危険因子であった.これらの因子を多変量解析すると,男性(p=0.025),直腸(p=0.0003),基礎疾患(p=0.016),オステオサルコペニア(p=0.041)が独立した危険因子であった.
 【結語】オステオサルコペニアは,大腸癌根治手術後の縫合不全の危険因子となる可能性が示唆された.