講演情報

[O18-8]閉塞性大腸癌に対するステント留置後の手術待機期間が短期・中期成績に与える影響

澤﨑 翔1,2,3, 樋口 晃生1, 玉川 洋1, 川邉 泰一1, 朱 美和1, 金井 達哉1, 和田 博雄2, 木谷 勇一2, 内山 護3, 加藤 綾3, 渥美 陽介3, 風間 慶祐3, 沼田 幸司3, 青山 徹3, 沼田 正勝3, 湯川 寛夫3, 小澤 幸弘2, 齋藤 綾3, 佐伯 博行1 (1.横浜南共済病院外科, 2.三浦市立病院外科, 3.横浜市立大学外科治療学)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景】欧州消化器内視鏡学会ガイドライン2020年版では閉塞性大腸癌に対するステント留置後の手術待機期間について,約2週間を推奨しているが,本邦の大腸癌治療ガイドラインでは言及されておらず,また施設によっては手術枠の問題などにより2週間以内に手術を行うことが困難なことも多い.
【目的】ステント留置後の手術待機期間が術後の短期および中期成績に与える影響を明らかにする.
【対象と方法】対象は2016年から2023年に当院で閉塞性大腸癌に対してステント挿入後に根治切除を施行し,pStage IIまたはIIIであった60例.手術待機期間とClavien-Dindo分類Grade3以上の術後合併症に関してROC曲線を作成し,カットオフ値を29日と設定した.ステント挿入期間29日未満のA群22例と29日以上のB群38例に分け,retrospectiveに臨床病理学的因子を比較し,短期および長期成績を検討した.
【結果】背景因子において,A群で年齢調整Charlson併存疾患係数(6.0点vs6.6点,p=0.09)が低く,術前CRP値(2.4vs0.8mg/dL,p=0.07)が高い傾向を認めたが,両群で年齢,性別,Alb値,CEA値,CA19-9値,腫瘍の局在(右側vs左側)や腫瘍径,深達度,Stage(II vs III),人工肛門造設や腹腔鏡手術の割合など有意差を認めなかった.短期成績において,手術時間や出血量に関して差を認めず,A群でリンパ節郭清個数は多く(33個vs21個,p=0.013),術後在院日数は長くなっていた(19.0日vs10.7日,p=0.006).術後合併症は9例(15%)に認め,A群5例(22.7%:縫合不全3例,腸閉塞2例),B群4例(10.5%:縫合不全2例,腸閉塞1例,排尿障害1例)と差を認めなかった(p=0.27).中期成績において,2年無再発生存率はA群70.2%,B群58.5%(p=0.48),2年全生存率はA群82.6%,B群86.9%(p=0.35)と両群で差を認めなかった.再発は17例19部位に認め,A群5例(肝臓1例,腹膜2例,肺1例,局所1例,遠隔リンパ節1例),B群12例(肝臓7例,腹膜3例,肺2例,局所2例)であり,再発形式に関して差を認めなかった.
【結語】閉塞性大腸癌に対するステント留置後の手術待機期間による短期および中期成績の差は認めなかった.今後症例を積み重ねさらに検討を行う.