講演情報
[R16-3]第4度会陰裂傷に対する外科的修復術の検討
美甘 麻裕1, 高木 徹1, 岩瀬 友哉1, 立田 協太1, 杉山 洸裕1, 小嶋 忠浩1, 赤井 俊也1, 鳥居 翔2, 倉地 清隆1, 竹内 裕也1 (1.浜松医科大学外科学第二講座, 2.浜松医科大学外科学第一講座)
【背景】経腟分娩に伴う会陰裂傷(以下PL)は,通常,産科医や助産師により縫合処置されることが多いが,未治療または不適切な治療により,慢性的な会陰痛,性交時痛,尿失禁や便失禁の原因となりうる.高度なPLでは,直腸肛門部に損傷がおよび,専門施設での処置を要することがある,近年,ハイリスク分娩が増加し,かつ,分娩施設の集約化に伴い,高度なPLに対して外科医が治療に関わる機会が増えてくると推察される.【方法】2014年1月から2024年3月までに当科が介入し手術を行った第4度PL9例について検討を行った.【結果】年齢は35(30-46)歳,初産分娩が5例,全例正期産,男児は4例,出生体重は3382(2680-3704)g,出産時出血量は1400(167-2165)mlであった.7例で吸引分娩,クリステレ圧出法が施行されていた.発症後1か月以上経過した2例では,回腸人工肛門造設術を併施したが,出産後24時間以内に緊急手術を行った7例では,人工肛門造設を行わず,直腸粘膜筋層縫合,膣壁縫合,肛門括約筋をオーバーラップで縫合修復を行い,術後に直腸腟瘻の発生はなく,また性交時痛や便失禁も認めておらず,予後良好な経過であった.手術時間は77.5(52-180)分,術中出血量は81(36-1074)ml,術後在院日数は7.5(6-11)日であった.【考察】分娩に伴うPLは,経膣分娩の約0.5%~5%程度に発症する.第4度PLは外肛門括約筋や直腸膣中隔に達する裂傷に加え,肛門粘膜や直腸粘膜の損傷を伴う.PLは,発症早期の場合,肛門括約筋を十分に剥離し,適切にオーバーラップさせて縫合することで予後良好な経過となることが多い.一方,陳旧性では,会陰組織の瘢痕化により,会陰部の解剖学的理解が困難なことにより治療に難渋し,再手術を要することもある.また,一時的人工肛門造設が必要となり,心理的ストレス,QOLの低下も大きいため,発症早期に適切な外科的治療介入可能な体制の構築が望まれる.