講演情報

[SR1-3]右側結腸癌に対するロボット支援手術の至適アプローチ法とは?

成廣 哲史1, 中嶋 俊介1, 梶 睦1, 隈本 智卓1, 北川 和男1, 戸谷 直樹1, 衛藤 謙2 (1.東京慈恵会医科大学附属病院柏病院外科, 2.東京慈恵会医科大学附属病院外科学講座)
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【背景】
右側結腸癌手術での主な合併症には,出血,縫合不全,他臓器損傷,腸閉塞が挙げられるが,National Clinical Databaseを用いた後ろ向き解析で,術後30日死亡率が1.2%,輸血は2.8%に施行されており,決して低くない頻度である.今後増加していく右側結腸癌に対するロボット支援手術は,より安全性を求められる術式である一方で,その方法は施設間でさまざまであり定型化されていないのが現状である.右側結腸癌手術に対するアプローチ法の一つであるInferior approach(IA)は膵臓,十二指腸を含む他臓器損傷を軽減したり,中枢郭清の際のsuperior mesenteric veinを含む血管損傷を防いだり,損傷を最小限にするという利点がある.
【目的】
IAでの右側結腸癌におけるロボット支援手術の短期治療成績を明らかにする.
【対象・方法】
2022年4月から2024年3月の間,IAでの右側結腸癌(横行結腸癌を除く)手術に対して,腹腔鏡(LS)群42例とロボット(RS)群20例を後方視的に比較検討した.
【結果】
出血量はLS群:5ml(0-1350),RS群:0ml(0-970)(p=0.02)とRS群で有意な低下を認めた.周術期合併症(Clavien-Dindo分類 All Grade)は,全体でLS群:15例(34.9%),RS群:1例(5.3%)とRS群で有意に少なく(p<0.01),術後腸閉塞割合がLS群:5例(11.6%),RS群:0例と有意な成績となった(p<0.05).術後在院期間は,LS群:10日(7-56),RS群:8日(7-36)とRS群で有意に短かったが(p<0.0004),手術時間は,LS群:238分(101-608),RS群:344分(220-490)で,RS群が有意に長かった(p<0.0005).またLS群で3例開腹移行症例を認めた.病理学的には,リンパ節郭清摘出個数がLS群:17個(6-49),RS群:16個(6-30),Distal resection marginはLS群:100mm(25-215),RS群:110(41-245)と両群でそれぞれ有意な差は認めなかった(p=0.42,p=0.23).
【結論】
IAでの右側結腸癌におけるロボット手術は,同様のapproachで施行した腹腔鏡手術と比較して,周術期合併症の減少や術後在院日数の短縮を認め安全に手術可能であった.また郭清されたリンパ節摘出個数,Distal resection marginにおいても腹腔鏡手術に劣っていなかった.今後も安全性と根治性において症例の蓄積が必要である.