講演情報

[WS3-8]クローン病,肛門部瘻孔に対するダルバドストロセルの経験

内野 基, 池内 浩基, 堀尾 勇規, 桑原 隆一, 楠 蔵人, 長野 健太郎, 野村 和徳, 友尾 祐介, 別府 直仁, 片岡 幸三, 木村 慶, 宋 智亨, 松原 孝明, 今田 絢子, 伊藤 一真, 大谷 雅樹, 池田 正孝 (兵庫医科大学消化器外科)
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【はじめに】クローン病肛門部瘻孔に対し脂肪幹細胞注入を用いた新たな治療が行われるようになった.これまでの報告では瘻孔の閉鎖に有効であることが報告されているが治療症例数は多くなく,適する症例もまだはっきりしていない.海外RCTでは短期効果は証明されなかったとの報告もある.今回,自験例での経過を報告し,今後の展望,問題点について考察する.【方法】当院で2024年4月までに脂肪幹細胞投与を行った症例の背景,併存治療内容,術後経過について後方視的に検討した.痔瘻の治癒は用指的圧迫でも排液が消失したもの,再燃は排液を伴う瘻管の開放とした.MRI評価は今回,検討しなかった.【結果】10例に行われていた.男女比=6:4,年齢33±8.6歳.痔瘻は原発口1か所が9例,2か所が1例,二次口は1か所7例,2か所例3であった.全例肛門管の狭窄はなしまたは軽度で原発口の縫合閉鎖が可能である症例でありIIL型または単純なIII型であった.併存治療はアダリムマブ,インフリキシマブ,ウステキヌマブであり,アダリムマブ治療中止し併存治療なく1年後に再燃した1例が含まれていた.手術からの経過観察期間は17.9±19.1か月であった.術後3-4週の瘻孔治癒は全例に認めたが,2例は,疼痛,排膿はなく,完全に自覚したわけではないがガスの排出の可能性を訴えていた.その後の経過中に症状は消失している.54週以上経過観察可能であった症例は2例のみで1例は同部位に週で再発,1例は48か月で再燃を認めたが抗菌薬投与で軽快しその後治癒状態である.ただし.術後62か月時に別部位の新たな瘻孔病変が出現している.54週以内に再燃した症例は,排液が時にあるものの,ADA継続でほぼQOL低下することなく比較的良好に経過している.【結語】狭窄がなく低位の単純な肛門病変に対して脂肪幹細胞治療が行われていた.多くは術後早期に症状消失するようだが,残存の可能性がある症例もその後の経過とともに軽快する可能性が示唆された.長期経過症例は少なく評価は困難であるが,再燃しても軽快,あるいはQOL維持できている症例を認めた.全症例で特に問題となる有害事象は認めていない.今後長期経過での効果を評価する必要がある.