講演情報

[O5-4]完全頭側アプローチで行うロボット支援下右結腸切除術のポイント

富永 哲郎, 野中 隆, 高村 祐磨, 大石 海道, 橋本 慎太郎, 白石 斗士雄, 野田 恵佑, 小野 李香, 澤井 照光, 松本 桂太郎 (長崎大学大学院腫瘍外科)
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以前よりわれわれは,ロボット支援下右結腸切除を頭側アプローチで行っている.手術手順は,網嚢開放,副右結腸静脈切離,中結腸根部郭清,回結腸動静脈切離,Surgical trunkの郭清,体腔内吻合である.腹腔鏡手術と比較しロボット支援下右結腸切除術で意識している工夫は,①Pfannenstiel切開:ロボット手術のポート配置を考慮し,左下腹部にPfannenstiel切開をおいて同部位から助手鉗子の補助,標本摘出,再建時のステープラー挿入を行う.術後創痛減少,整容性,ヘルニアが少ないなどの利点もある.②安全な血管処理:右側結腸癌における出血トラブル防止のため,副中結腸静脈・中結腸動静脈基部の剥離は重要である.本アプローチで手術の序盤に頭側より静脈系を処理することでその後の安全な手術遂行の一助となる.ロボット安定した視野と,ロボット鉗子特有の繊細な切開操作,手振れ防止機能により安全かつ確実な処理が可能である.③完全頭側授動:腹腔鏡手術で結腸間膜基部の授動を行う際,しばしば鉗子の柄の部分で間膜血管に過度な緊張がかかり,授動範囲は自ずと限られていた.ロボット手術では鉗子角度の自由度が広がり,血管基部に緊張をかけず間膜基部の剥離ができる.頭側から「完全に」腸間膜基部を授動することで,体位やアプローチを変えずに単一視野で授動が完了し,手術時間の短縮につながる.④安定した体腔内吻合:腹腔鏡手術の体腔内吻合は,術者と助手の連携が重要で慣れを要する.ロボット手術の場合は,固定視野下に安定した吻合が可能である.またPfannenstiel切開部からステープラーを挿入することで,吻合部位に対し軸を合わせやすい.
結果:2023年4月までにロボット支援下右結腸切除術を行ったのは42例であった.男性19例・女性23例,年齢は72歳,BMI23.0,手術時間199分,出血量10mlであった.CD grade2は3例(SSI1例,UTI1例,腹腔内膿瘍1例),CDgrade3以上は1例(縫合不全)認めた.
結語:ロボット支援下右半結腸切除術は,安定した血管処理と間膜授動,安全な吻合ができる.