講演情報

[R5-2]直腸癌における縫合不全と再発・予後との関係について

佐伯 泰愼, 田中 正文, 福永 光子, 米村 圭介, 大原 真由子, 水上 亮介, 山田 一隆 (大腸肛門病センター高野病院消化器外科)
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【背景・目的】
 縫合不全は,直腸癌術後の重篤な合併症の1つであり,発生率は7.9-19%と報告されている.また,縫合不全が予後や再発に関連する報告と関連しないという報告がある.本研究の目的は,縫合不全に関連する因子と縫合不全が予後や再発との関係について評価することである.
 検討1
 【対象と方法】
2011-2023年に根治切除を行った直腸癌症例で腸管吻合を行った614例を対象として縫合不全に関連する因子を抽出した.縫合不全はClavian-Dindo分類Grade 3以上を縫合不全ありと定義した.
 【結果】
 全体の概要:男性 376例,平均年齢 61.6歳,腫瘍部位はRS:Ra:Rb/P 198:164:252,術式は高位前方切除(HAR):低位前方切除(LAR):超低位前方切除(SLAR):括約筋間直腸切除(ISR)=149:169:161:135,一時的人工肛門造設は257例,Stage0/I:II:III:IV=236:144:205:29.術中ICG 66例,経肛門減圧チューブは122例であった.術後縫合不全(all Grade)は64例に認めGrade3以上が58例(9.4%)であった.
 縫合不全に関する因子は多変量解析にて男性のみが因子であったが亜全周以上の腫瘍も傾向を認めた.経肛門減圧チューブや術式は抽出されなかった.
 検討2
 【対象と方法】2011-2019年に根治切除を行ったStage I-III直腸癌症例で吻合を行った407例を対象として予後・再発・局所再発に関連する因子を抽出した.
 【結果】
 平均観察期間は6.5年.
 縫合不全あり:なしでの5年全生存率は84.5:93.1(%)p=0.22,5年無再発生存率は71.0:81.4(%)p=0.10,5年局所無再発率は86.9:98.1(%)p=0.0007であった.
 変量解析にて予後因子はPNI,組織型が因子,再発因子は組織型,Stageが因子,局所再発因子は縫合不全,組織型が因子であった.
 【結語】
 直腸癌腸管吻合手術例での縫合不全率は9.4%で,縫合不全に影響する因子として男性が関連していた.また縫合不全は予後や無再発生存には影響しなかったが局所再発には影響していた.