講演情報

[WS3-7]クローン病に合併する痔瘻の治療―痔瘻根治手術の検討も含めて―

栗原 浩幸, 金井 忠男, 赤瀬 崇嘉, 藤井 頼孝, 森山 穂高 (所沢肛門病院)
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【診断】クローン病(以下CD)の肛門病変は形態学的特徴がある.すなわちcavitating ulcerやulcerated edematous pile,肥厚した皮膚,多発痔瘻などやそれらの混在である.これらを見た場合にはCDを念頭に置いた腸管精査が必要である.特に若年者の場合には不可欠である.一方CDは高率に肛門病変を併存するので,CDの腸管病変を見たら肛門の診察を行うべきである.腸管症状に先行して肛門症状が出現することもあるので注意を要する.深部痔瘻については画像診断を行う場合もあるが必須ではない.直腸肛門狭窄の症例についてはMRIを行う.【治療】CDの腸管症状のコントロールが不良の場合は,腸管症状のコントロールを優先し,肛門病変については必要に応じseton法(loose seton)を行う.腸管症状のコントロールが良好でも,明確な瘻管形成のないときにはseton法を行う.瘻管形成しているときには,痔瘻の原発口の位置により方針を決める.すなわち原発口の位置が恥骨直腸筋よりも頭側の場合にはseton法を行い,恥骨直腸筋より尾側であれば痔瘻根治手術を行うが,後者が大部分である.手術は原発口から原発巣まではfistulotomyによる開放術(lay open法)を原則とし,原発巣以遠の瘻管(二次瘻管)については切除またはseton法など臨機応変に対処する.すなわち二次瘻管が短い筋間痔瘻についてはlay open法,二次瘻管が長かったり複雑なものに関しては,coring lay open法(原発口から原発巣はlay openし,二次瘻管はくり抜き)を行う.多発痔瘻であっても,原発口から原発巣まではすべて開放術を原則とする.坐骨直腸窩痔瘻については原発巣を直視下に確認し開放する後方正中アプローチによる根治術を行う.【結果】CD根治手術例の治癒期間(130.6±75.0日)は非CD根治手術例(64.9±35.4日)の約2倍を要したが,42例中41例(97.6%)が禁制を保持して治癒した.secondary lesion例とincidental lesion例の比較では,痔瘻の数,類上皮細胞肉芽腫の検出頻度,治癒期間に差はなく,同様の扱いが適切と考えられた.生物学的製剤投与は治癒を早める傾向にあった.【結論】CD痔瘻でも手術適応を厳格に守り適切な手術を行えば根治手術可能と考える.