講演情報

[VSY2-2]裂肛・肛門狭窄に対するrotation skin graft(RSG)法の検討

小山 良太, 石山 勇司, 石山 元太郎, 西尾 昭彦, 及能 拓郎, 佐藤 綾 (札幌いしやま病院)
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【はじめに】慢性裂肛は,急性裂肛を繰り返すことにより不可逆性の線維性変化が生じる病態であり,一般的に薬剤抵抗性となれば手術適応となる.われわれはSSGを発展的に改良しRSG(rotation skin graft)を考案した.これは皮膚弁を直線的に移動させず,回転的要素を加えることで,SSGの欠点を改善したものである.
【対象】当院にて2023年4月1日から2024年3月31日まで,慢性裂肛に対してRSGを施行した21例(男性13例,女性8例)を検討した.
【手術方法】低位腰椎麻酔下,ジャックナイフ位で施行.主に後方の裂肛部を垂直に切開し拡張する.切開部を利用しここから線維化した内括約筋を鋭的に乱切する.結節縫合にて数針粘膜皮膚縫合を行う.減張切開は,中央部から左右方向に切り進め,皮弁を指で肛門内に向かって押しスライドを促す.この操作により皮膚弁は正中方向に向かってやや回転しながら移動する.皮膚弁に緊張がないことを確認し終了とする.
【結果】年齢は中央値63歳(28-84).手術時間は中央値18分(9-35).拡張率(術後径/術前径)は中央値2.1(1.25-2.5)であり,全ての症例で狭窄症状の改善を認めた.術後soilingやincontinenceの訴えはなかった.創面積は,RSGで中央値20mm2(8-48)であり,同時期に行われたSSG7例の中央値194 mm2(134-249)と比較し有意に小さかった.治癒期間はRSGが中央値38日(5-72)で,SSGの56日(29-112)よりも短い傾向があった.術後合併症は,1例に創部感染による痔瘻を生じ,切除術にて治癒した.
【考察】SSGは,瘢痕組織を切除し,その欠損部に肛門縁の有茎皮膚弁を直線的にずらし移動させることで裂肛部を被覆し,治癒を促進する術式であり根治性は高い.しかしSSGでは皮膚弁の移動距離が長いことと,皮膚自体の収縮性により創面積が大きくなるが,RSGでは,回転要素を加えて移動させることでこれを改善することが可能であった.また,外側方向からの血流がより維持されることが創治癒を促進し,瘢痕形成も軽減されることで伸展不良も改善されるものと考える.
【結語】 SSGを発展的に改良した方法としてRSGを考案し,慢性裂肛に対する有効性を示した.