講演情報

[VPD4-2]当院における人工靱帯を用いたGant-Miwa-Thiersch法の手術手技と治療成績

錦織 直人1, 佐々木 義之1, 錦織 ルミ子1, 錦織 麻衣子1, 尾原 伸作2, 錦織 方人1 (1.一路会錦織病院, 2.国保中央病院)
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当院では2012年より直腸脱に対し人工靱帯Leeds-Keio Mesh(以下LKM)を用いたGant-Miwa-Thiersch法(以下GMT法)による根治術を行なっており,その手術手技と治療成績について発表する.【症例】当院で2012年1月から2023年6月に直腸脱に対し同術式による根治術を行った107例の検討を行なった.適応外基準は,若年者で肛門内圧の低下を認めない症例,精神疾患合併患者で怒責がコントロール出来ない症例としている.年齢の中央値は81歳(40-97歳),女性99例・男性8例,脱出長の中央値は7cm(2-15cm)であった.【手術手技】局所麻酔が34例,腰椎麻酔が73例,手術時間の中央値は39分(23-89分)であった.Gant-Miwa法は絹糸を用いて行い,歯状線付近まで十分に行うことが重要である.1症例あたりのGMT施行数は中央値26(6-106)であった.Thiersch法は1時と7時方向に皮膚切開を行い,大径のデシャンを用いて外肛門括約筋の外周にLKMを挿入する.【術後成績】術後出血,慢性疼痛,創傷治癒遅延は認めなかった.腸管粘膜側へのLKM露出を術後早期に3例認め抜去したが,挿入位置に関する手技的な要因と考えられた.術後約2年後にLKMの遅発感染を1例認めた.【術後再発】観察期間の中央値は21ヶ月(1-102ヶ月)で再発は9例(8.4%)であった.4例はLKMを追加挿入,1例は粘膜脱部にALTA療法施行することで再脱出は認めなかった.一方3例は2cm程度の脱出で再手術を希望せず,1例は6cm長の再脱出であったが認知症の悪化で再手術を希望されなかった.術後の便秘は4例が摘便を数回要した以外は,便秘なしまたは便秘薬で排便コントロール良好であった.術後便失禁は107例中,89例が調査可能であった.術前からの便失禁を65例に認め,術後に改善が33例,持続が32例であった.肛門内圧検査を行なった51例において,術前最大肛門静止圧(MRP)の中央値は5.9mmHg,術後MRPは中央値が9.1mmHgで術前後でのMRPの軽度上昇を認めた(P<0.01,t検定).【まとめ】LKMを用いたGMT法の手技は低侵襲で手術時間も短く,局所麻酔下でも施行可能である.術後再発も低率で,再発時も経会陰手術の追加で完治する症例が多い.本術式の要点についてビデオを中心に発表する.