講演情報
[WS3-5]当院における生物学的製剤併用によるCrohn病合併痔瘻に対する手術
錦織 直人1, 佐々木 義之1, 錦織 ルミ子1, 錦織 麻衣子1, 尾原 伸作2, 錦織 方人1 (1.一路会錦織病院, 2.国保中央病院)
【はじめに】Crohn病合併痔瘻の治療は,外科手術による肛門部の感染コントロールとprimary lesionに対する生物学的製剤等での病勢制御による「肛門機能の保持」が重要と考える.当院でのCrohn病合併痔瘻に対する手術手技と治療成績を発表する.【術前肛門機能評価】術前に肛門内圧検査を行ない,最大肛門静止圧(MRP)と最大随意収縮圧(MSP)を測定する.術前肛門機能の把握は,術式選択や術後のseton紐取り扱いの一助になる.【術式選択】原発口の潰瘍性病変が歯状線付近で,瘻管の走行が浅く術前MRP値の低下を認めない症例ではlay open法を選択する症例もある.上記以外では基本的にはseton法を行う.seton法は緩く結紮しながら痔瘻を根治する痔瘻結紮法(ligature)としている.【当院でのCrohn病合併痔瘻に対するseton法】全原発口の確実な同定が最も重要と考える.setonにはゴム紐を用い,単に原発口と2次口間にsetonを単に留置するのではなく,2次口周囲の皮膚を大きく切開し,外側へドレナージを効かせることが重要である.当院では2次口-2次口間のseton留置は極力行なわず,特に2次口周囲で膿皮症を形成している場合は可及的に全切除を行なう.当院での手術手技をビデオにて供覧する.【Crohn病合併痔瘻の外科治療後の内科治療】上記外科手術を行なった後に,可及的速やかに生物学的製剤の投与を考慮する.Crohn病合併痔瘻手術後,抗TNF-α製剤投与例は10例では全例が肛門病変の根治・完全寛解が得られた.抗IL-12/23抗体製剤は3例に投与し,2例が肛門病変の根治・完全寛解が得られた.1例が1次無効で肛門病変が増悪し緊急ドレナージを施行,その後抗TNF-α製剤投与しその後に肛門病変の根治・完全寛解が得られた.【術後の肛門機能評価】全例で,慢性疼痛や持続性の排液や創傷治癒遷延は認めず,便失禁も認めなかった.肛門内圧検査では術前後のMRP変化率の中央値は73.3%,MSP変化率の中央値は97.0%であった.【まとめ】生物学的製剤を中心とした内科治療によるCrohn病自体の病勢制御を併用した根治を目指した外科治療によりCrohn病合併肛門病変の予後は改善しうると考える.