講演情報

[PD7-4]直腸癌局所再発に対する経会陰鏡視下手術の有用性と有望な術前治療

塚田 祐一郎, 伊藤 雅昭, 池田 公治, 長谷川 寛, 北口 大地, 西澤 祐吏 (国立がん研究センター東病院大腸外科)
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緒言:直腸癌局所再発はR0切除によって根治が期待できるが,R0切除の困難さ,手術の安全性,手術時間の長さが課題である.Trans-anal total mesorectal excision(TaTME)の技術を直腸癌局所再発の手術に応用することで,バージンエリアからの手術や腹部・会陰2チーム同時手術が可能となり,根治性や安全性の向上および手術時間の短縮が期待される.また予後向上のためには効果的な術前治療が必要と考えられている.
 目的:直腸癌局所再発に対する経会陰鏡視下手術の有用性と有望な術前治療を明らかにする.
 方法:2008年~2022年に手術が施行された直腸癌局所再発108例の術後短期成績を後ろ向きに解析し経会陰鏡視下手術の有用性を検討した.2008年~2017年に手術が施行された71例の長期成績から有望な術前治療を検討した.
 結果:2008年~2022年に手術が施行された108例のうち50例には経会陰鏡視下手術が施行され{Trans-perinieal(Tp)群},58例には施行されなかった(Non-Tp群).Tp群とNon-Tp群において,手術時間:380分/441分,腫瘍摘出時間:225分/292分,出血量:430ml/1155ml(いずれも中央値)であり,術中輸血施行割合:18.0%/53.4%,全術後合併症発生割合:74.0%/82.8%,Clavien-Dindo分類Grade3以上の術後合併症発生割合:34.0%/41.1%,再手術施行割合:6.0%/17.2%,R0切除割合:88.0%/81.0%であった.また,2008年~2017年の71例のうち,局所再発時に放射線照射歴があったのは3例(4%)のみであり,35例が手術先行で治療され,23例に術前化学放射線療法(CRT)が,13例に術前化学療法(NAC)が施行された.手術先行群/術前CRT群/NAC群の病理学的circumferential resection margin(中央値)は1.0mm/5.0mm/0.6mm,R0切除割合は71.4%/91.3%/69.2%であり,5年局所無再発生存割合は44.5%/57.4%/23.9%,5年無再発生存割合は32.9%/50.2%/23.1%,5年全生存割合は64.8%/71.8%/38.9%であった.
 結語:直腸癌局所再発に対する経会陰鏡視下手術は手術の根治性や安全性の向上,手術時間の短縮に寄与する可能性がある.放射線既照射例の少ない本邦において術前CRTは有望な術前治療であり,現在ランダム化第3相試験(JCOG1801)でその意義を検証中である.