講演情報

[SY2-7]側方リンパ節郭清を伴う直腸癌手術におけるロボット手術と腹腔鏡手術の比較検討

野中 隆, 富永 哲郎, 髙村 祐磨, 大石 海道, 野田 恵輔, 橋本 康匡, 濱崎 景子, 荒井 淳一, 大坪 竜太, 宮崎 拓郎, 澤井 照光, 松本 桂太郎 (長崎大学病院腫瘍外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
はじめに:ロボット支援下手術による大腸切除術は2018年4月に直腸,2022年4月には結腸が保険収載され現在多くの施設で施行されるまでとなった.当科では2018年7月からロボット支援下直腸切除術を導入し2019年1月からロボット支援下側方リンパ節郭清を導入した.血管が入り乱れる側方腔のような深部骨盤で複雑な操作を要する側方郭清手技はロボット支援下手術の手技が有効で有り,腹腔鏡手術にない利点を活かすことが出来ると考えている.
目的:当科で行われた側方リンパ節郭清を伴う直腸切除術の治療成績を腹腔鏡手術群(Lap)とロボット支援下手術(Ro)の2群に分けて検討し,ロボット支援下手術の安全性と有効性を検証する.
側方郭清の適応:腹膜反転部にかかる進行直腸癌に対して両側側方郭清,CRT後の症例のみ側方リンパ節腫脹側のみの郭清を行う.
対象と方法:2016年4月から2024年3月までに当科で行われた下部直腸癌(Ra~Rb)手術279例のうち,側方郭清を伴う直腸癌手術症例84症例(TPE,他臓器合併切除症例を除く)を対象とし,Lap群43例,Ro群41例の2群に分けて短期・長期成績を検証した.
結果:年齢・性別・ASA・術前治療・側方郭清(両側/片側)に差は認めなかった.cStageI/II/III/IVでLap群0/12/23/8,Ro群0/13/24/4と両群間では差を認めなかった.Lap群/Ro群において手術時間443/459(分)は差を認めなかったものの出血量220/110(g)で有意にRo群が少なかった(P=0.045).G3以上の術後合併症はLap群/Ro群で14.0/4.9(%),G2以上の排尿障害14.0/4.9(%)で有意差は認めないもののRo群が良好な成績であった.術後在院日数は19.5/16(日)とその他の因子と同様に有意差は認めなかった.長期成績に関しては5年全生存率82%/88%(P=0.82),5年無再発生存率81%/87%(P=0.81),3年無局所再発生存率100%/100%で両群間に差は認めていない.
まとめ:側方郭清を要するロボット支援下直腸切除術は腹腔鏡手術と比較して手術時間は遜色なく,出血量の減少・排尿障害の軽減が期待でき,TME単独よりもロボット手術の利点が生きると思われた.