講演情報

[O1-2]大腸癌同時性肝転移症例に対する術後補助化学療法が予後に与える影響について

田中 佑典, 塩見 明生, 賀川 弘康, 眞部 祥一, 山岡 雄祐, 笠井 俊輔, 井垣 尊弘, 額田 卓, 森 千浩, 島野 瑠美, 高嶋 祐助, 石黒 哲史, 坂井 義博, 谷田部 悠介, 辻尾 元, 八尾 健太, 横山 希生人 (静岡県立静岡がんセンター)
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【背景】大腸癌同時性肝転移症例に対する術後補助化学療法の効果は明らかでない.【目的】大腸癌同時性肝転移症例に対する補助化学療法が予後に与える影響を明らかにすること.【対象と方法】2002年から2021年まで,原発巣,及び肝転移巣を全て切除できた同時性肝転移を有する原発性大腸癌症例を対象とし,肝以外の遠隔転移を有する症例,重複癌,多発癌は除外した.術後補助化学療法を行なった症例,行わなかった症例をそれぞれAC群,Non-AC群と定義し,Propensity Score Matching(PSM)法を用いて両群間の背景因子を調整し,全生存期間(OS)と無再発生存期間(RFS)を比較した.【結果】対象は210例,年齢中央値は64歳,男性/女性137/73例,原発巣占居部位は結腸/直腸=129/81例,原発巣T4症例が71例(34%),原発巣のリンパ節転移陽性例が164例(78%),肝転移最大径5cm以上の症例が54例(26%),肝転移4個以上の症例が83例(40%),肝切除マージン1mm未満の症例が57例(27%),大腸切除術前CEAが200ng/mL以上の症例が23例(11%),原発巣と肝転移巣の同時切除症例が53例(25%),肝切除前に化学療法を行なった症例が30例(14%),AC/NonAC群=110(52%)/100(48%)例であった.術後補助化学療法の内訳は,CAPOXが42例(38%),mFOLFOX6が37例(34%),5-FU/LVが16例(15%),UFT/LVが8例(7%),Capecitabineが3例(3%),その他が4例(4%)であった.PSM前はAC群で年齢が有意に低く,原発巣と肝転移巣の同時切除症例が有意に多かった.年齢,性別,原発巣占居部位,原発巣の深達度,原発巣のリンパ節転移の有無,肝転移最大径,肝転移個数,肝切除マージン,大腸切除術前CEA,肝転移切除の時期(原発巣切除と同時か異時),肝切除前の化学療法の有無の11項目でマッチングを行い,PSM後はAC/NonAC群=67/67例で,いずれの因子も有意差はなかった.PSM後のOS,RFSはともにAC群で有意に延長を認め,5年全生存率はAC/Non-AC群=78.3/65.0%,5年無再発生存率はAC/Non-AC群=33.7/20.8%であった(観察期間中央値61.4ヶ月).【結語】大腸癌同時性肝転移の術後再発高リスク症例に対して,術後補助化学療法によりOS,RFSの延長が得られる可能性が示唆された.