講演情報
[R19-6]低位筋間痔瘻に対する痔瘻結紮法とシートン法の治療経験
畑 嘉高 (畑肛門医院)
【背景】痔瘻に対するシートン法が普及し,現在の標準外科治療のひとつになっている.古典的な痔瘻治療として瘻管に通したゴムなどを適度な強さで結紮を繰り返して治療していくシートン法は同じく古くから行われてきた瘻管を強く結紮して開放創として痔瘻を治療する痔瘻結紮法と同一視されることがあり,諸家により解釈が異なることがある.痔瘻結紮法は三輪徳定の著書を参考にすると単純な痔瘻に適応されるものであるとされる.シートン法は単に瘻管に通したゴムを適度な強さで締め直しを繰り返すシートン法に加え,瘻管をくり抜いた上で痔瘻結紮法と行うMinimal seton術式と瘻管をくり抜いた上でシートン法を行うMinimal seton術式が存在し,さらに諸家により創意工夫がなされている.Minimal seton術式は発表当時と近年では瘻管を結紮する強さに変化がみられるため名称は同じでも解釈により治療概念が複数存在する.【術式】低位筋間痔瘻に対して痔瘻結紮法とシートン法およびMinimal seton術式を行った.Minimal seton術式は二次口周囲からくり抜き等の操作後にゴムを通しそれを強く結紮する痔瘻結紮法とシートン法を行った場合を区別して検討する.【対象と方法】2016年4月1日から2023年3月31日までに低位筋間痔瘻に対して手術を行った259例を対象とし,各術式の治療成績(合併症,治癒期間,非治癒,再発)について検討した.【成績】シートン法217人,Minimal seton術式(シートン法に準ずる)32人,痔瘻結紮法5人,Minimal seton術式(痔瘻結紮法に準ずる)5人であった.治療脱落例はシートン法で9例,Minimal seton術式(シートン法に準ずる)で1例であった.平均治癒期間はシートン法で118日と最も長く,痔瘻結紮法が41日で最も短かった.合併症はいずれもシートン法でみられ,膿瘍形成1例,非治癒1例,再発1例,瘢痕部に皮下膿瘍形成3例,ゴム脱落後皮垂処理2例,ゴム抜去1例であった.