講演情報

[PD8-7]P分類ならびにperitoneal cancer indexから見た大腸癌腹膜播種に対するcytoreductive surgeryの適応と治療成績

水本 明良1, 高尾 信行1, 今神 透1, 安 炳九1, 寒川 玲1, 大江 康光1, 戸川 剛1, 松永 隆志1, 米村 豊2 (1.淡海医療センター消化器外科・腹膜播種センター, 2.NPO腹膜播種治療支援機構)
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(目的)大腸癌腹膜播種に対するcytoreductive surgery(CRS)では,肉眼的に遺残腫瘍のない完全切除(CC-0)が予後の改善に極めて重要であり,CC-0が可能な症例の選択が鍵となる.P分類とperitoneal cancer index(PCI)から見た大腸癌腹膜播種に対する治療方針ならびに治療成績を報告する.
(方法)2012年11月から2022年4月までの大腸癌腹膜播種291症例を対象とした.臨床症状や画像所見から,播種病変の詳細な確認が必要と判断された症例に対して,審査腹腔鏡を施行した.CRSは,消化管切除,子宮付属器切除,脾摘や胆摘などの臓器切除と壁側腹膜切除を組み合わせて行った.P分類ならびにPCIは術中開腹所見から決定した.
(結果)291例中77例に対して,CRSの適応判断のために審査腹腔鏡検査を施行した.審査腹腔鏡の結果,45例(58%)はCRSの適応がないと判断した.審査腹腔鏡後にCRSを施行した32症例では,21例(66%)でCC-0の手術が施行された.一方,審査腹腔鏡なしでCRSを選択した214例では,11例が試験開腹に終わり,125例(58%)でCC-0の手術が施行された.CRSを施行した235例の内訳は,P1症例12例,P2症例58例,P3症例165例であった.CC-0の手術は,P1症例100%,P2症例57例(98%),P3症例77例(47%)で施行された.PCI 9以下(P-9),PCI 10から19(P-19),PCI 20から29(P-29),PCI 30から39(P-39)と4群に分け,それぞれの成績をみると,CC-0の割合はP-9 102/104(98%),P-19 36/52(69%),P-29 9/61(15%),P-39 0/18(0%)であった.術後生存率に関して,全例のCRSからの生存率は3年で50%と5年で32%で,CC-0の場合の5年生存率は45%であった.CC-1以上では5年生存を認めなかった.P1とP2症例のCRSからの5年生存率はそれぞれ82%と56%で,P3症例では18%であった.P3でCC-0の手術が施行されれば5年生存率は30%であった.
(結語)大腸癌腹膜播種において,CRSによる予後の改善を得るにはCC-0の手術が不可欠であり,P分類とPCIの決定がきわめて重要である.症例の選択には審査腹腔鏡は有用な手法である.P1やP2またはPCI 10未満は腹膜切除の絶対適応で,P3の症例でもPCIが20点未満であればCRSを検討すべきである.