講演情報
[SR5-1]横行結腸癌に対する腸管授動手技と術前血管把握を行った適切な血管処理
大木 悠輔, 杉下 博基, 石丸 啓, 秋田 聡, 吉田 素平, 古賀 繁宏, 菊池 聡, 松本 紘典, 垣生 恭佑, 渡部 克哉, 高木 健次, 久米 達彦, 押切 太郎 (愛媛大学医学部消化管腫瘍外科学)
はじめに:我々は横行結腸癌に対する手術アプローチとして,頭側尾側挟み撃ち法(Pincerアプローチ)を行っている.Pincerアプローチは,大網と横行結腸,膵臓,壁側腹膜の癒合を剥離して,横行結腸・横行結腸間膜の授動を行うことで横行結腸の近接臓器である膵臓や脾臓の損傷リスクが減らせると考えている.横行結腸の血管解剖は亜型が多いため術前にダイナミックCTを撮像し血管解剖を把握することで腫瘍血管を同定し,適切な血管処理がおこなえる.腫瘍血管を同定することで,例えば脾彎曲部癌に対するリンパ節郭清に対して中結腸動脈と下腸間膜動脈からの左結腸動脈のうち一方を省略でき,血管処理に要する手技時間が減少し手術時間の短縮が図れる可能性がある.今回,当院で施行した横行結腸癌に対するロボット手術を含めた腹腔鏡下手術の短期成績について検討した.
対象:2020年4月から2024年4月までに横行結腸癌に対して切除術を施行した34例.
結果:男性23例,女性11例,年齢中央値は74歳,横行結腸癌の局在は右側/中央/左側が13例/9例/12例,術前StageはI/II/IIIが11/15/8例であった.手術アプローチは腹腔鏡/ロボット支援下25/9例であり,手術術式は結腸右半切除/横行結腸切除/結腸左半切除16/10/8例,手術時間中央値は341分,出血量は0ml,開腹移行は1例,術後Clavien-Dindo Grade2以上の合併症は2例(腸管穿孔,無気肺),術後在院日数中央値は7日であった.病理学的Stageは0/I/II/IIIは1/8/18/7例,中間リンパ節転移陽性は3例,主リンパ節には転移がなかった.術後再発は2例で再発形式は肝転移,腹膜転移であった.
考察:今回の検討でリンパ節転移は傍腸管リンパ節に多く,深達度がT3以上の25症例のうち中間リンパ節転移は3例(12%)であった.術後リンパ節再発をきたした症例はなく(経過観察期間中央値:20ヶ月),術前に把握した腫瘍血管を処理するリンパ節郭清は腫瘍学的に適切である可能性が示唆された.
結語:横行結腸癌に対する手術では術前血管把握が重要であり,Pincerアプローチで横行結腸の安全な授動を行い,血管解剖に即した血管処理が有用である.
対象:2020年4月から2024年4月までに横行結腸癌に対して切除術を施行した34例.
結果:男性23例,女性11例,年齢中央値は74歳,横行結腸癌の局在は右側/中央/左側が13例/9例/12例,術前StageはI/II/IIIが11/15/8例であった.手術アプローチは腹腔鏡/ロボット支援下25/9例であり,手術術式は結腸右半切除/横行結腸切除/結腸左半切除16/10/8例,手術時間中央値は341分,出血量は0ml,開腹移行は1例,術後Clavien-Dindo Grade2以上の合併症は2例(腸管穿孔,無気肺),術後在院日数中央値は7日であった.病理学的Stageは0/I/II/IIIは1/8/18/7例,中間リンパ節転移陽性は3例,主リンパ節には転移がなかった.術後再発は2例で再発形式は肝転移,腹膜転移であった.
考察:今回の検討でリンパ節転移は傍腸管リンパ節に多く,深達度がT3以上の25症例のうち中間リンパ節転移は3例(12%)であった.術後リンパ節再発をきたした症例はなく(経過観察期間中央値:20ヶ月),術前に把握した腫瘍血管を処理するリンパ節郭清は腫瘍学的に適切である可能性が示唆された.
結語:横行結腸癌に対する手術では術前血管把握が重要であり,Pincerアプローチで横行結腸の安全な授動を行い,血管解剖に即した血管処理が有用である.