講演情報
[PD9-3]潰瘍性大腸炎に対するフィルゴチニブ,ウパダシチニブの有効性・安全性の比較―多施設後ろ向き観察研究―
野上 章1, 阿曽沼 邦央1,2, 岡林 慎二3, 池ノ内 真衣子4, 日比 紀文1, 新﨑 信一郎4, 深田 雅之5, 小林 拓1,2,6 (1.北里大学北里研究所病院消化器内科, 2.北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター, 3.橋本市民病院総合内科, 4.兵庫医科大学消化器内科学講座, 5.東京山手メディカルセンター炎症性腸疾患内科, 6.北里大学医学部消化器内科)
【背景】
潰瘍性大腸炎(UC)におけるフィルゴチニブ(FIL),ウパダシチニブ(UPA)の有効性の比較は十分に検討されていない.
【方法】
多施設後ろ向き観察研究(北里大学北里研究所病院,兵庫医科大学,東京山手メディカルセンター)で,対象は2022年3月~2023年12月にFILおよびUPAが投与された18歳以上の非寛解UCとした.主要評価項目は8週後の臨床的改善率/寛解率,副次評価項目は継続投与率とした.臨床的改善を「PMS≧30%且つ≧2点の改善」且つ「血便≧1点の改善または血便≦1点」,臨床的寛解を「PMS≦2点且つ便回数・医師評価≦1点,血便=0点」と定義.主要項目は修正ポアソン回帰分析,副次項目はCox回帰分析で解析しこれらは性別,年齢,重症度,罹患範囲,併用薬,TOF使用歴で調整された.サブグループ解析はTOF曝露の有無(TOF-naïve/TOF-exposed)に層別化し各項目を評価した.
【成績】
FIL98例(男性n=64,年齢中央値37.0),UPA70例(男性n=48,年齢中央値38.5),合計168例の患者が登録された.8週の臨床的改善はFIL54例(55.1%),UPA50例(71.4%),臨床的寛解はFIL46例(46.9%),UPA46例(65.7%)であった.多変量解析でUPAはFILと比較して有意に高い臨床的改善(調整リスク比[aRR]:1.52,95%信頼区間[CI]:1.13-2.04),臨床的寛解(aRR:1.36,95%CI:1.06-1.74)を示した.TOF-naïve(FIL82例UPA48例),TOF-exposed(FIL16例UPA22例)に分けられ,多変量解析でTOF-naïve例においてUPAはFILと比較して有意に高い臨床的寛解(aRR:1.45,95%CI:1.03-2.03)を示したが,TOF-exposed例では有意差を認めなかった(aRR:1.77,95%CI:0.84-3.73).継続率はFILとUPAで有意差は認めなかったがUPAにおいてTOF-naïveはTOF-exposedより有意に継続率が低かった(調整ハザード比[aHR]0.36,95%CI:0.14-0.96).有害事象はFIL25例(25.5%),UPA32例(45.3%)で観察され,投与中止に至った有害事象はFIL7例(7.1%),UPA14例(20.0%)であった.観察期間中に血栓症,主要心血管イベント,悪性腫瘍は認められなかった.
【結論】
TOF曝露歴によらずFILよりUPAにおいて高い有効性が示されたが,有害事象はUPA投与患者で一定数観察された.
潰瘍性大腸炎(UC)におけるフィルゴチニブ(FIL),ウパダシチニブ(UPA)の有効性の比較は十分に検討されていない.
【方法】
多施設後ろ向き観察研究(北里大学北里研究所病院,兵庫医科大学,東京山手メディカルセンター)で,対象は2022年3月~2023年12月にFILおよびUPAが投与された18歳以上の非寛解UCとした.主要評価項目は8週後の臨床的改善率/寛解率,副次評価項目は継続投与率とした.臨床的改善を「PMS≧30%且つ≧2点の改善」且つ「血便≧1点の改善または血便≦1点」,臨床的寛解を「PMS≦2点且つ便回数・医師評価≦1点,血便=0点」と定義.主要項目は修正ポアソン回帰分析,副次項目はCox回帰分析で解析しこれらは性別,年齢,重症度,罹患範囲,併用薬,TOF使用歴で調整された.サブグループ解析はTOF曝露の有無(TOF-naïve/TOF-exposed)に層別化し各項目を評価した.
【成績】
FIL98例(男性n=64,年齢中央値37.0),UPA70例(男性n=48,年齢中央値38.5),合計168例の患者が登録された.8週の臨床的改善はFIL54例(55.1%),UPA50例(71.4%),臨床的寛解はFIL46例(46.9%),UPA46例(65.7%)であった.多変量解析でUPAはFILと比較して有意に高い臨床的改善(調整リスク比[aRR]:1.52,95%信頼区間[CI]:1.13-2.04),臨床的寛解(aRR:1.36,95%CI:1.06-1.74)を示した.TOF-naïve(FIL82例UPA48例),TOF-exposed(FIL16例UPA22例)に分けられ,多変量解析でTOF-naïve例においてUPAはFILと比較して有意に高い臨床的寛解(aRR:1.45,95%CI:1.03-2.03)を示したが,TOF-exposed例では有意差を認めなかった(aRR:1.77,95%CI:0.84-3.73).継続率はFILとUPAで有意差は認めなかったがUPAにおいてTOF-naïveはTOF-exposedより有意に継続率が低かった(調整ハザード比[aHR]0.36,95%CI:0.14-0.96).有害事象はFIL25例(25.5%),UPA32例(45.3%)で観察され,投与中止に至った有害事象はFIL7例(7.1%),UPA14例(20.0%)であった.観察期間中に血栓症,主要心血管イベント,悪性腫瘍は認められなかった.
【結論】
TOF曝露歴によらずFILよりUPAにおいて高い有効性が示されたが,有害事象はUPA投与患者で一定数観察された.