講演情報

[P4-1-7]大腸癌患者におけるサルコペニア診断に関して,3D-CTを用いた大腰筋肉量の容積(PV)評価の有用性

盧 尚志, 髙橋 玄, 安藤 祐二, 村井 勇太, 十朱 美幸, 幸地 彩貴, 仲川 裕喜, 髙橋 宏光, 入江 宇大, 雨宮 浩太, 土谷 祐樹, 茂木 俊介, 塚本 亮一, 髙橋 里奈, 本庄 薫平, 河合 雅也, 石山 隼, 杉本 起一, 冨木 裕一, 坂本 一博 (順天堂大学下部消化管外科)
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【背景】サルコペニアは骨格筋量の減少を特徴とし,高齢者に多く,悪性腫瘍に合併すると予後不良となる病態であり,CTで大腰筋の断面積(PA)を測定して診断されてきた.【目的】本研究では,大腸癌(CRC)患者のサルコペニア診断において,3次元コンピュータ断層撮影(3D-CT)を用いた大腰筋容積(PV)の評価という診断アプローチの有用性を検討した.【方法】2004年から2017年の間に当院で原発巣切除術を受けた80歳以上のCRC患者150人である.サルコペニア症例(S群)と非サルコペニア症例(nS群)を識別するために,従来のCT測定におけるPAと,3D-CT測定によるPVを用いた.3D-CTデータはCTの元データを変換可能にするソフト(ziostation2)を利用した.臨床病理学的因子,手術因子,術後合併症,予後を両群間で比較した.【結果】S:nS比はPV評価で15:135,PA評価で52:98であった.手術結果と術後合併症は,それぞれの方法で定義されたS群とnS群で有意差はなかった.全生存期間(OS)は,PV評価で判定したnS群と比較してS群で不良であったが(p<0.01),PA評価で判定したS群とnS群では有意差はなかった(p=0.77).OSのCox比例ハザードモデルでは,PV評価ではS群は予後不良の独立した予測因子であった(p<0.05)が,PA評価では予後の予測因子ではなかった(p=0.60).【考察】PVの評価はPAよりも立体的で連続した範囲を測定するため誤差が少なく,信頼性が高いとされている.PVはPA測定で用いたCTの画像データを利用するため患者にとって追加される負担がない.今回,PV測定ではS群10%,PA測定では34.7%であった.大腸癌にサルコペニアを合併した予後不良な一群をPA評価よりもPV評価の方が正確に抽出できた可能性が示唆された.【結論】高齢CRC患者におけるサルコペニアの同定にPV評価は,PA評価と比較してより実用的で予後不良の予測に感度が高い可能性があり,カットオフ値の選定など課題はあるものの,有用であることが示唆された.