講演情報

[O2-1]難治性潰瘍性大腸炎に対するJAK阻害剤の治療成績

下立 雄一, 池田 有希, 坂上 純也, 西村 直之, 毛利 裕一, 松枝 和宏, 水野 元夫 (倉敷中央病院消化器内科/IBDセンター)
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【背景・目的】難治性潰瘍性大腸炎(UC)に対する新規薬剤の進歩は著しく,従来から使用されてきた抗体製剤に加えて,経口製剤であるJanus kinase(JAK)阻害剤が使用可能となり,治療抵抗例に対する大腸全摘除術は年々低下している.一方で3種類のJAK阻害剤の有効性を直接比較したデータは少なく,本研究では当院におけるJAK阻害剤3剤の治療成績を比較検討した.
【方法】対象は2018年7月~2024年1月の期間に当院で潰瘍性大腸炎に対してJAK阻害剤を導入した計37例(トファシチニブ(TOF):15例,フィルゴチニブ(FIL):11例,ウパダシチニブ(UPA):11例 重複あり)を対象とした.臨床的寛解は,partial Mayo score(PMS)が2点以下かつ個々のサブスコアが1点以下とし,入院や治療薬の増量・追加・変更を要した場合(本人希望や副作用による中止を含む)を再燃と定義した.名義変数はFisherの正確検定,連続変数は一元配置分散分析0ne-way ANOVAを使用した.
【結果】TOF/FIL/UPA導入時の平均年齢は42/43/42歳(p=0.99),5-ASA不耐例40/27.3/27.3%(p=1),Bio naïve例27/64/45.5%(p=0.18),JAK既投与例 0/36.4/18.2%(p=0.029).導入時の平均PMS 5.7/3.2/5.8(p=0.004),平均CRP値 3.4/0.12/2mg/dl(p=0.16),平均Alb値 3.7/4.3/3.6g/dl(p=0.052),平均Hb値 13.1/13/12.1g/dl(p=0.44)であり,FIL導入例では有意に低疾患活動性の症例が多かった.導入2,8,16,30週間後の臨床的寛解率は,46.7/45.5/63.6%(p=0.71),66.7/54.5/81.8%(p=0.3),53.3/63.6/81.8%(p=0.39),53.3/54.5/70%(p=0.69)であり,3剤間で差は認めなかった.2週時点で臨床的寛解が得られた症例では30週までUCの症状増悪による中止例はなく,8週時点で寛解率はplateauとなった.TOFは帯状疱疹2例(投薬中止1例),薬疹1例,FILは帯状疱疹1例,アナフィラキシーショック1例(投薬中止),UPAは帯状疱疹1例を認めたが,すべて保存的加療で改善した.
【結語】少数例の検討かつ患者選択にバイアスはあるものの,JAK3剤いずれも8週までに高い有効性を示し,特に2週時点で臨床的寛解が得られた症例は長期治療効果が維持される可能性が示唆された.