講演情報
[P19-2-5]早期S状結腸癌の術前CTC検査で偶然指摘された小腸異所性膵の1例
小川 尚之, 藤森 正彦, 先本 秀人, 中塚 博文 (呉市医師会病院)
症例は58歳男性.:3ヶ月前,検診での便潜血陽性の精査目的に近医で大腸内視鏡検査施行.S状結腸の径10mmのJNET2B typeのIsポリープに対してEMR施行された.病理学的組織学的診断でadenocarcinoma in adenoma,深達度1000μm以深,HM0,VM0,ER0と診断され,1ヶ月前に追加切除目的に当科紹介.術前の造影CT検査ではS状結腸癌のEMR後の病変は指摘できず,有意なリンパ節転移や遠隔転移は認めなかった.腹腔鏡下S状結腸切除術目的に当科入院し,入院時に大腸内視鏡下にマーキングとしてS状結腸癌EMR後瘢痕部へのクリッピング・点墨を施行.大腸内視鏡終了直後に送気されたairを可能な限り患者に我慢してもらった状態でクリッピングの位置の把握のためのCTCを施行した.CT画像の解析で,空腸遠位側の小腸に壁在性の径12mmの腫瘤を認めた.腹腔鏡下S状結腸切除術の術中に小開腹創から小腸を引き出しながら小腸の触診で壁在腫瘤を検索した.回盲部から220cmの空腸に弾性硬の壁材腫瘤を触知同定し得たため,同部位で腫瘤の辺縁を確保するようにして楔状部分切除術を施行した.摘出標本で,小腸腫瘤は2.5×0.9cmの黄白色調の隆起性腫瘤で,病理組織学的診断で小腸粘膜上皮に異形成や悪性所見は見られず,異所性膵と診断された.術後,小腸の触診による影響もあり,麻痺性イレウスを合併したが,保存的治療で経過し,術後16日目に退院となった.無症状の小腸発生の異所性膵は術中に偶然発見されて摘出されることはあるが,今回のように術前に小腸腫瘤を同定して摘出されることは稀である.入院前に施行した術前CTでは指摘されておらず,大腸内視鏡直後のCTCで小腸までairが到達して小腸が拡張していたために,壁在病変の評価が可能であったと考えられた.CTCの際の送気で小腸を拡張させれば小腸の小腫瘤の同定にも有用な可能性があると考えられた.今回我々は,S状結腸癌追加切除術の術前CT検査で偶然指摘された小腸異所性膵の1例を経験したので報告する.