講演情報

[VWS1-6]巨大痔核・全周性痔核に対するテンションフリーを目指したE3・A/A・E3法

渡邉 賢二1, 安部 達也1, 太田 盛道1, 鉢呂 芳一1, 小原 啓1, 國本 正雄1, 斉藤 裕輔2, 村上 雅則2 (1.くにもと病院肛門外科, 2.くにもと病院消化器内科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】巨大痔核や全周性痔核にLEを行う際は,切除し過ぎると術後狭窄を引き起こし,痔核組織を取り残すと浮腫や疼痛を引き起こす.LE後の疼痛は排便障害,排尿障害,出血,腫脹,治癒遷延など,様々な術後合併症と関連する.術後疼痛の原因として,痔核の残存やトリミング不足によるスキンタグ形成,ドレナージ不良による感染,創に掛かるテンションなどが考えられる.とくに排便時は肛門管と直交する方向に大きな引張力が掛かるため,肛門痛はピークに達する.よって肛門管上皮を極力温存しつつ,病的組織を適確に切除・郭清することによって,伸縮性に富んだ柔らかい肛門に修復することが重要である.今回,我々が行っているテンションフリーを目指したEA法(内痔核治療法研究会のE3・AまたはA・E3)の手技と成績について報告する.【方法】手術は仙骨硬膜外麻酔下のジャックナイフ体位で,肛門括約筋が十分に弛緩した状態で行う.皮膚と肛門上皮の切開は痔核幅の半分程度とし,左右上皮下の痔核組織は切除側に向けて剥離する.痔核の背面は歯状線の口側まで十分に剥離し(E3),肛門クッションが本来の位置に戻りやすくする.歯状線レベルの肛門上皮を左右から切り狭めて,外痔核と内痔核の間を剥離する.これにより痔核組織が細長くなるので,ヘルマン線付近で結紮して歯状線レベルで切離する(外痔核切除).肛門上皮のセミクローズは,横方向のテンションを予防するためにバイト幅を極力小さくする.続いて内痔核部分にALTAを投与するが(E3・A),術式選択に迷う場合や術者の好みでALTAを先に投与する場合もある(A・E3).【成績】2011年から2020年の間に当院で行ったEA法は3,403例で,そのうち全ての主痔核にEA法を行った382例(11.2%)について検討した.術後合併症は20例(5.2%)に認められ,発熱(9例)と出血(7例)が多かった.平均観察期間は19ヵ月で,5例(1.3%)が内痔核の再発のために再手術を受けた.【結語】E3・A/A・E3法は内痔核部分の上皮が温存され,創部にテンションが掛からないように工夫を施すことで,排便時に肛門管の拡張がそれほど制限されないので,重度の痔核に有用な術式と考える.