講演情報

[R5-4]ポリグリコール酸シートを用いた線維化促進による消化管の耐圧能上昇の検証

丹田 秀樹1, 渋谷 雅常1, 米光 健1, 関 由季1, 黒田 顕慈1, 笠島 裕明1, 福岡 達成1, 西村 潤也1,2, 井関 康仁2, 西居 孝文2, 井上 透2, 前田 清1 (1.大阪公立大学医学研究科消化器外科学, 2.大阪市立総合医療センター消化器外科)
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【背景】
 ポリグリコール酸(polyglycolic acid:PGA)シートは,コラーゲン組織による線維化を増強して,物理的耐圧性を高めるとされており,主に肺や膵手術で広く使用されている.以前の当教室の研究で,直腸DST吻合の際にPGAシートを用いて補強すると縫合不全の発生率低減に寄与することを報告し,消化管吻合においてもPGAシートは有用と考えられた.しかし,基礎実験によるデータの裏付けはなかったため,今回我々はラットを用いて,PGAシートが消化管吻合部の線維化増強に及ぼす影響を検証した.
 【方法】
 ラットを用いて吸入麻酔下に開腹手術を行い,盲腸の漿膜面にPGAシートを貼付し,3日後,5日後,7日後にそれぞれ標本を摘出し,PGAシート貼付部の組織を経時的に評価した.また5日後の標本についてはPGAシートにより増生される線維性被膜の厚みを評価した.また別検体を用いて,盲腸に約1cmの切開を加え,6-0ナイロン糸を用いて全層連続縫合で閉鎖した.その際半数にはPGAシートを補強材として縫合閉鎖部に用い,残り半数は対照群とした.5日後に標本を摘出し,耐圧能試験を行い,2群間での比較を行った.全ての動物実験のプロトコールは本学の動物実験委員会の承認を得て実施した.
 【結果】
 盲腸漿膜面には術後早期からPGA線維内に炎症細胞の誘導を認めた.Masson染色では青色に染まる線維化領域を伴っており,経時的に増加傾向を認めた.5日後の5匹の検体において,厚みの中央値は855(648-1048)μmであった.耐圧能に関しては10検体(対照群5体vs PGA群5体)で評価を行い,対照群で57(45-90)mmHg,PGA群で90(81-94.5)mmHgとなり,PGA群で有意に耐圧能が高かった(p=0.046).
 【結語】
 PGAシートにより腸管壁の漿膜測に線維化を主とするバリア構造が形成され,耐圧能の向上に寄与している可能性が示唆された.