講演情報

[O10-2]当院での局所進行直腸癌に対するtotal neoadjuvant therapy(TNT)および手術の治療成績

安井 昌義, 森 良太, 北風 雅敏, 末田 聖倫, 賀川 義規, 西村 潤一, 佐伯 崇史, 深井 智司, 藤井 悠花, 金村 剛志, 和田 浩志, 後藤 邦仁, 大森 健, 大植 雅之 (大阪国際がんセンター消化器外科)
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【はじめに】局所進行直腸癌に対する日本の標準治療(側方リンパ節郭清を伴う手術先行)と欧米の標準治療(TNT等)には乖離がある.近年,欧米からTNTを検証したランダム化比較第III相試験の結果が報告され,日本でもTNTに注目が集まる.しかしこれら試験の対照は術前化学放射線療法で,日本の標準治療との比較では無い.また,TNTでは本来は予後良好な患者に対して過大侵襲となる可能性,性・排尿機能の低下が増悪する可能性等のデメリットがある.当院では上記デメリットを最小限とする為multimodalityによる十分な術前診断でCRM陽性,cN2以上,MRI_EMVI陽性などの所見がある再発高リスク患者を対象としTNTを導入してきた.その安全性につき報告する.
 【対象】2018年4月~2023年4月までにTNTを施行した21例.治療効果,手術成績,組織学的治療効果,等を後方視的に検討した.
 【結果】年齢65(45-77)歳,男性/女性:17/1,cStage II/III/再発患者:4/16/1例.TNT選択理由はcT4bが3例,cN2以上11例,側方リンパ節転移5例,EMVI陽性4例.導入化学療法併用が4例,地固め化学療法併用が17例.cT4b(外腸骨血管,仙骨)の2例で腫瘍/リンパ節の縮小が得られず緩和的化学療法に移行した.経過観察中5例を除く14例で根治術を施行した.側方郭清は5例(3例で内腸骨血管切除)に施行.手術施行例ではR0手術92.8%,R1手術7.2%.手術時間は372(275-550)分,出血量は125(5-410)ml.Clavien-Dindo分類gradeIII以上の術後合併症2例(14.3%)で,術後在院日数14(7-27)日であった.pCRは1例(7.2%)であった.
 【考察】当院の成績と,その他の本邦の安全性報告も併せTNTおよび手術・側方リンパ節郭清は許容されると考える.今後は最も有望なレジメン,適格患者,側方郭清の施行基準などを明確にした上で,本邦標準治療との比較や評価が必要である.