講演情報
[P18-1-2]馬蹄腎を合併した上行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した1例
中嶋 俊介, 柳 舜仁, 今泉 佑太, 川窪 陽向, 河合 裕成, 小林 毅大, 伊藤 隆介, 中林 幸夫 (川口市立医療センター消化器外科)
【症例】50歳代,女性.
【主訴・病歴】血便,嘔吐,腹痛で来院.
【検査】下部消化管内視鏡:上行結腸に狭窄を伴った2型病変(生検;高分化型腺癌).
CT:上行結腸に造影効果を伴う腫瘤性病変と口側腸管の著明な拡張を認めた.明らかな遠隔転移なし.腎下極で癒合した馬蹄腎を認めた.
【診断】上行結腸癌,A,type2,cT4a,N0,M0,cStageIIb.
【治療】閉塞解除目的に大腸ステントを挿入.経口摂取を開始し全身状態を改善させ,大腸ステント挿入後29日目に手術施行.頭側アプローチ先行にて馬蹄腎と右腎腹側外側を走行する右尿管を確認,温存し腹腔鏡下結腸右半切除術D3郭清を行った.術後経過は良好で術後7日目に退院した.現在術後補助化学療法としてcapecitabine療法を行っている.
【考察】馬蹄腎は約400人に1人の頻度で発生する比較的稀な先天性奇形である.多数の異常血管叢により腎原基の上昇と内方回旋が阻止されて発生するため,正常腎より低位置にあり性腺血管や尿管は腎腹側を下行している.馬蹄腎を合併した大腸癌症例の報告はわずかであり,中でも右側結腸癌症例の報告は非常に少ない.右側結腸癌手術ではいくつかアプローチ法が考案されているが,いずれのアプローチにおいてもembryological planeを意識した剥離,授動操作が肝要とされる.馬蹄腎合併症例は腎盂の位置・尿管の走行位置が正常解剖と異なるが,腎筋膜の背側であるため腎筋膜腹側のembryological planeを選択して剥離すれば安全に手術可能である.ただし,エネルギーデバイスの熱やキャビテーションが及ばないように,通常と異なる尿管走行を把握しておく事が重要と思われる.本症例は施設の定型化に準じて,頭側アプローチで行ったが,十二指腸下行脚外側腎腹側を走行する右尿管を損傷無く右側結腸授動を行う事ができた.しかし,特に頭側で尿管走行が通常解剖と異なる馬蹄腎合併症例では,尾側アプローチ先行にて尿管を常に視野に入れながら右側結腸授動を行うアプローチの方がより適していると考えられた.
【主訴・病歴】血便,嘔吐,腹痛で来院.
【検査】下部消化管内視鏡:上行結腸に狭窄を伴った2型病変(生検;高分化型腺癌).
CT:上行結腸に造影効果を伴う腫瘤性病変と口側腸管の著明な拡張を認めた.明らかな遠隔転移なし.腎下極で癒合した馬蹄腎を認めた.
【診断】上行結腸癌,A,type2,cT4a,N0,M0,cStageIIb.
【治療】閉塞解除目的に大腸ステントを挿入.経口摂取を開始し全身状態を改善させ,大腸ステント挿入後29日目に手術施行.頭側アプローチ先行にて馬蹄腎と右腎腹側外側を走行する右尿管を確認,温存し腹腔鏡下結腸右半切除術D3郭清を行った.術後経過は良好で術後7日目に退院した.現在術後補助化学療法としてcapecitabine療法を行っている.
【考察】馬蹄腎は約400人に1人の頻度で発生する比較的稀な先天性奇形である.多数の異常血管叢により腎原基の上昇と内方回旋が阻止されて発生するため,正常腎より低位置にあり性腺血管や尿管は腎腹側を下行している.馬蹄腎を合併した大腸癌症例の報告はわずかであり,中でも右側結腸癌症例の報告は非常に少ない.右側結腸癌手術ではいくつかアプローチ法が考案されているが,いずれのアプローチにおいてもembryological planeを意識した剥離,授動操作が肝要とされる.馬蹄腎合併症例は腎盂の位置・尿管の走行位置が正常解剖と異なるが,腎筋膜の背側であるため腎筋膜腹側のembryological planeを選択して剥離すれば安全に手術可能である.ただし,エネルギーデバイスの熱やキャビテーションが及ばないように,通常と異なる尿管走行を把握しておく事が重要と思われる.本症例は施設の定型化に準じて,頭側アプローチで行ったが,十二指腸下行脚外側腎腹側を走行する右尿管を損傷無く右側結腸授動を行う事ができた.しかし,特に頭側で尿管走行が通常解剖と異なる馬蹄腎合併症例では,尾側アプローチ先行にて尿管を常に視野に入れながら右側結腸授動を行うアプローチの方がより適していると考えられた.