講演情報

[O15-3]直腸癌局所切除後の再発・再増大症例の検討

後藤 健太郎, 岡村 亮輔, 肥田 侯矢, 影山 悠, 愛須 佑樹, 木下 裕光, 前川 久継, 星野 伸晃, 小濵 和貴 (京都大学消化管外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
[背景]早期直腸癌局所切除後で外科的追加切除適応症例のうち,外科的切除を行わなかった症例のフォローアップ(FU)の間隔は定まっておらず,再発・局所再増大症例についての纏まった報告は少ない.追加切除因子を伴う直腸癌局所切除後の再発・局所再増大症例について当科で経験した症例を報告する.
 [症例1]82歳男性,肝細胞癌加療中に指摘されたRb直腸癌に対し内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行された.壁深達度T1b,垂直断端・脈管侵襲陽性で,追加化学放射線療法(CRT)を希望された.CRT終了7ヶ月後に下部消化管内視鏡で局所再増大の診断となるも,他癌併存のためBest Supportive CareとなりCRT終了2年3か月後に永眠した.
 [症例2]45歳男性,Ra直腸癌に対しEMRを施行され,壁深達度T1bかつ脈管侵襲陽性であったが,経過観察を希望された.EMRの1年半後に局所再増大および多発肝転移を指摘され全身化学療法後にHartmann手術・肝転移切除を施行したが,術後1ヶ月で多発肝転移再発を来し,現在全身化学療法継続中.
 [症例3]45歳男性,肛門縁2.5cmのRb直腸癌に対し内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行され,壁深達度T1b・脈管侵襲陽性で,追加CRTを希望.1年後,局所再増大と肝転移再発を指摘され,全身化学療法後にMiles手術・肝転移切除を行い,6ヶ月無再発経過中.
 [症例4]76歳男性,Rb直腸癌に対し経肛門的腫瘍切除を行い,壁深達度T1b・垂直/水平断端不明であった.術後4年半後に多発リンパ節転移・骨転移・肝転移・腹膜播種の所見であった.化学療法を行うも,4ヶ月後に永眠した.
 [症例5]74歳女性,Rb直腸癌に対しESDを行い,壁深達度T1b・垂直/水平断端陰性・脈管侵襲なしの所見であった.術後3年7ヶ月後に血便で精査を行われ,大動脈周囲・側方リンパ節転移を伴う局所再増大の診断となり,全身化学療法継続中.
 [考察]当院で経験した追加切除因子を伴う直腸癌局所切除後の再発・再増大症例5例は全例遠隔転移を伴っていた.経過観察やCRTの選択肢を提案する際は,再発・再増大した際の遠隔転移・人工肛門のリスクを説明する必要がある.また急速な進行を来たす可能性があり,綿密なFUの必要性を含め方針について更なる検討が必要と思われる.