講演情報
[R9-1]当院における直腸癌に対する予防的側方郭清の検証
米村 圭介, 佐伯 泰愼, 田中 正文, 福永 光子, 水上 亮佑, 大原 真由子, 山田 一隆 (大腸肛門病センター高野病院消化器外科)
【背景】腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にあり,壁深達度がcT3以深の直腸癌に対する側方郭清は大腸癌治療ガイドラインで推奨されているが,予防的郭清については局所再発抑制効果が期待できるが生存改善効果は限定的で弱い推奨とされている.今回我々は,当院で実施した予防的側方リンパ郭清症例を検討し,その意義について検証した.
【方法】 2011年1月から2022年12月までの間に当院で切除を行った腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にある腺癌症例で術前に側方リンパ節転移陰性と診断した182例について検討した.当院ではCT,MRIで短径5mm以上のものを転移陽性と判定している.対象症例の側方リンパ節郭清度別(LD0,LD1,LD2)の5年無再発生存期間(RFS:Relapse-free survival)について検討を行った.
【結果】対象症例は,平均年齢66歳(32~94歳),男性:116例,女性:66例,cT3:157例,cT4:25例,cN0:70例,cN1:69例,cN2:40例,cN3:3例,側方リンパ節郭清度はLD0:21例,LD1:40例,LD2:121例で,病理学的に側方リンパ節転移陽性であった症例は11例(6.0%)であった.全症例における側方リンパ節郭清度別の5年RFSはLD0:53.4%(21例),LD1:87.0%(40例),LD2:68.9%(121例)p=0.025と有意差をもって郭清度により予後が分かれていた.cN0症例70例における5年RFSはLD0:61.1%(14例),LD1:94.1%(18例),LD2:62.3%(38例)p=0.077であった.臨床診断で中枢方向のリンパ節転移陽性と診断した症例112例については5年RFSはLD0:35.7%(7例),LD1:81.3%(22例),LD2:71.8%(83例)p=0.106であった.
【結語】単施設における少数例かつ後方視的検討であるが,術前診断で側方リンパ節転移がないと診断した症例においても6%転移陽性の症例が見られており,また,RFSの検討からもLD0症例の予後は不良であり,予防的な側方リンパ節郭清を行うべきと考えられる.一方で,LD1症例とLD2症例ではLD1症例の方が予後良好であり,側方リンパ節郭清の範囲を省略できる可能性が示唆された.
【方法】 2011年1月から2022年12月までの間に当院で切除を行った腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にある腺癌症例で術前に側方リンパ節転移陰性と診断した182例について検討した.当院ではCT,MRIで短径5mm以上のものを転移陽性と判定している.対象症例の側方リンパ節郭清度別(LD0,LD1,LD2)の5年無再発生存期間(RFS:Relapse-free survival)について検討を行った.
【結果】対象症例は,平均年齢66歳(32~94歳),男性:116例,女性:66例,cT3:157例,cT4:25例,cN0:70例,cN1:69例,cN2:40例,cN3:3例,側方リンパ節郭清度はLD0:21例,LD1:40例,LD2:121例で,病理学的に側方リンパ節転移陽性であった症例は11例(6.0%)であった.全症例における側方リンパ節郭清度別の5年RFSはLD0:53.4%(21例),LD1:87.0%(40例),LD2:68.9%(121例)p=0.025と有意差をもって郭清度により予後が分かれていた.cN0症例70例における5年RFSはLD0:61.1%(14例),LD1:94.1%(18例),LD2:62.3%(38例)p=0.077であった.臨床診断で中枢方向のリンパ節転移陽性と診断した症例112例については5年RFSはLD0:35.7%(7例),LD1:81.3%(22例),LD2:71.8%(83例)p=0.106であった.
【結語】単施設における少数例かつ後方視的検討であるが,術前診断で側方リンパ節転移がないと診断した症例においても6%転移陽性の症例が見られており,また,RFSの検討からもLD0症例の予後は不良であり,予防的な側方リンパ節郭清を行うべきと考えられる.一方で,LD1症例とLD2症例ではLD1症例の方が予後良好であり,側方リンパ節郭清の範囲を省略できる可能性が示唆された.