講演情報
[P12-2-2]複数回肺転移巣に対して切除,放射線治療を施行した後の直腸癌膵転移に対して膵体尾部切除術を施行し長期生存を得られた1例
松田 直樹, 國末 浩範, 伊達 慶一, 久保 孝文, 野﨑 功雄, 太田 徹哉 (岡山医療センター外科)
症例は80歳,男性.直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術+側方リンパ節郭清+回腸人工肛門造設術を施行した.病理組織学的所見ではpT3(SS),pN0,M0 pStageIIaであった.術後1年3か月後,転移性肺腫瘍に対して切除術を施行した.その後転移性肺腫瘍の出現を繰り返し切除術を1回,定位照射を3回施行した.初回手術後より5年時のCTにて膵体尾部の主膵管拡張,膵体部に造影効果を伴う腫瘤を認めた.EUS-FNAを施行し,腺癌であったため原発性膵体部癌,転移性膵体部癌の鑑別を要したが,免疫組織化学染色にてCK7は一部陽性であったがCDX2陽性であり,直腸癌原発転移性膵体部癌と診断した.転移性肺腫瘍の状態は安定しており,切除適応と判断し膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的検査では直腸癌膵転移として矛盾しない所見であった.膵体尾部切除術後2年9か月経過した現在,定位照射を施行した転移性肺腫瘍病変は縮小を維持しておりその他に新たな転移,再発病変は認めていない.
転移性膵腫瘍は剖検例ではしばしばみられるものの,臨床上は発見時に多臓器転移をきたしている場合が多く,切除対象になることはまれである.大腸膵転移では,多臓器にコントロール不良な転移巣がなく,完全切除が望める症例では集学的治療の一環として外科的切除を行う意義があると考えられる.今回,直腸癌術後複数回の転移性肺腫瘍の出現に対して切除術,放射線治療を施行した後の転移性膵腫瘍に対して膵体尾部切除術を施行し長期生存を得られた1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.
転移性膵腫瘍は剖検例ではしばしばみられるものの,臨床上は発見時に多臓器転移をきたしている場合が多く,切除対象になることはまれである.大腸膵転移では,多臓器にコントロール不良な転移巣がなく,完全切除が望める症例では集学的治療の一環として外科的切除を行う意義があると考えられる.今回,直腸癌術後複数回の転移性肺腫瘍の出現に対して切除術,放射線治療を施行した後の転移性膵腫瘍に対して膵体尾部切除術を施行し長期生存を得られた1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.