講演情報

[PD5-7]大腸low-risk T1b癌への内視鏡治療適応拡大は可能か

仙波 重則1, 工藤 進英1, 一政 克朗1, 神山 勇太1, 高階 祐輝1, 森田 友梨子1, 椎名 脩1, 岩崎 俊斗1, 桜井 達也1, 小川 悠史1, 中原 健太1, 竹原 雄介1, 向井 俊平1, 小形 典之1, 林 武雅1, 若村 邦彦1, 澤田 成彦1, 馬場 俊之1, 根本 哲生2, 三澤 将史1 (1.昭和大学横浜市北部病院消化器センター, 2.昭和大学横浜市北部病院臨床病理診断科)
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【背景と目的】大腸T1癌内視鏡治療後の追加腸切除を考慮する転移リスク因子のうちSM浸潤距離のみのリスク因子を有するlow-riskT1b癌は,リンパ節転移率が1.3%と他リスク因子陽性症例に比し低いとの報告がある(大腸癌治療ガイドライン2022年).今回,low-riskT1b癌における同時性リンパ節転移および再発の観点からこれらの病変が内視鏡治療適応拡大が可能か,検討した.
 【対象と方法】2001年-2019年の期間に内視鏡的あるいは外科的切除された大腸T1b癌933例を対象とした.T1b癌933例のうちlow-riskT1b癌354例と脈管侵襲/組織型/簇出のリスク因子を1つ以上認めるhigh- risk T1b癌579例とで,リンパ節転移率および再発率について比較検討した.
 【結果】Low-riskT1b癌354例のうち外科的切除例は249例,うちリンパ節転移陽性は0例であった(0%,95%CI 0-1.2%).High-riskT1b癌579例のうち外科的切除は520例,うち70例(13.5%,95%CI 10.6-16.7%)にリンパ節転移を認めた.Low-riskT1b癌354例中に再発は認めなかった.High-riskT1b癌では,内視鏡治療単独群(n=59)のうち5例(8.5%,95%CI 2.8-18.7%)が再発,3例(5.1%,95%CI 1.1-14.1%)が死亡した.また外科的切除群(n=520)のうち7例(1.3%,95%CI 0.5-2.8%)が再発,3例(0.6%,95%CI 0.1-1.7%)が死亡しており,内視鏡治療単独群の再発率・死亡率(原病死)が有意に高かった.
 【結論】High-risk T1b癌では,内視鏡治療単独での再発・死亡リスクが高く,積極的な追加腸切除の必要性が検証された.一方,low-risk T1b癌では内視鏡治療単独群においてリンパ節転移および再発は認めず,今後より積極的な内視鏡治療の対象となる可能性が示唆された.