講演情報
[PD8-4]同時性腹膜播種症例に対する治療の現状
永田 洋士, 加藤 岳晴, 髙見澤 康之, 森谷 弘乃介, 塚本 俊輔, 金光 幸秀 (国立がん研究センター中央病院)
背景:切除不能大腸癌に対する薬物療法は著しく進歩しているが,腹膜播種への効果は必ずしも明らかでない.また腹膜播種の分類および治療方針は欧米と日本で異なっており,治療成績の比較は難しい.
目的:大腸癌治療ガイドラインに準じた治療を行ってきた当院における現状を明らかにすることを目的として,直近の治療を検討する.
方法:2017年から2021年に当院を初回受診し,治療を受けた大腸癌症例の中から腹膜播種と診断された症例を診療録から後方視的に同定し,臨床病理学的特徴と予後を検討した.
結果:同時性遠隔転移を伴う594例の中で,治療開始時に腹膜播種が診断されたのは166例(Stage 4症例の27.9%)で,そのうちM1c1症例は55例であった(播種症例全体の33.1%).生存期間中央値は33.6ヶ月と49.2ヶ月,5年全生存割合はそれぞれ26.9%と39.7%であった.初回治療開始前のCTが保存されていた46例の中で,23例(50.0%)で遠隔腹膜に転移を示唆するCT所見が認められ(ctP2-3),その生存期間中央値は35.8ヶ月,5年生存割合は14.7%であった.そのうちCurBが得られた5例(21.7%)の予後はCurCの18例より有意に良好であり(ハザード比0.13,95%信頼区間:0.02-0.99),1例で5年生存が得られた.M1c1症例の中で腹腔内が観察されたのは45例で,そのうち33例(73.3%)で遠隔腹膜に播種結節が認められた(sP2-3).CurBが達成された10例(30.3%)の予後はCurC症例に比べて有意に良好であり(ハザード比0.22,95%信頼区間:0.06-0.81),3例で5年生存が認められた.なお腹腔内観察が行われた45例のうち14例(31.1%)では,術前CTで腹膜転移を示唆する所見が認められなかった.
考察:今回の検討における腹膜播種症例の予後は既報よりも良好な傾向であったが,CurC症例の予後は著しく不良であった.根治切除が難しいとされてきたP2-3症例群において,現在の治療ガイドラインに変わる新たな治療戦略の開発が求められる.
目的:大腸癌治療ガイドラインに準じた治療を行ってきた当院における現状を明らかにすることを目的として,直近の治療を検討する.
方法:2017年から2021年に当院を初回受診し,治療を受けた大腸癌症例の中から腹膜播種と診断された症例を診療録から後方視的に同定し,臨床病理学的特徴と予後を検討した.
結果:同時性遠隔転移を伴う594例の中で,治療開始時に腹膜播種が診断されたのは166例(Stage 4症例の27.9%)で,そのうちM1c1症例は55例であった(播種症例全体の33.1%).生存期間中央値は33.6ヶ月と49.2ヶ月,5年全生存割合はそれぞれ26.9%と39.7%であった.初回治療開始前のCTが保存されていた46例の中で,23例(50.0%)で遠隔腹膜に転移を示唆するCT所見が認められ(ctP2-3),その生存期間中央値は35.8ヶ月,5年生存割合は14.7%であった.そのうちCurBが得られた5例(21.7%)の予後はCurCの18例より有意に良好であり(ハザード比0.13,95%信頼区間:0.02-0.99),1例で5年生存が得られた.M1c1症例の中で腹腔内が観察されたのは45例で,そのうち33例(73.3%)で遠隔腹膜に播種結節が認められた(sP2-3).CurBが達成された10例(30.3%)の予後はCurC症例に比べて有意に良好であり(ハザード比0.22,95%信頼区間:0.06-0.81),3例で5年生存が認められた.なお腹腔内観察が行われた45例のうち14例(31.1%)では,術前CTで腹膜転移を示唆する所見が認められなかった.
考察:今回の検討における腹膜播種症例の予後は既報よりも良好な傾向であったが,CurC症例の予後は著しく不良であった.根治切除が難しいとされてきたP2-3症例群において,現在の治療ガイドラインに変わる新たな治療戦略の開発が求められる.