講演情報
[PD4-1]切除可能左側閉塞性結腸癌に対するbridge to surgeryとしての大腸ステントと経肛門イレウス管の比較(多施設共同データベースK-SEERの解析から)
浅田 祐介1,2, 落合 大樹2, 深川 剛生2, 菊池 弘人3, 岡林 剛史4, 北川 雄光4, 水野 翔大1, 亀山 哲章1 (1.荻窪病院外科・消化器外科, 2.帝京大学医学部外科学講座, 3.川崎市立川崎病院一般・消化器外科, 4.慶應義塾大学医学部外科学教室(一般・消化器外科))
【背景】
切除可能閉塞性大腸癌に対するbridge to surgeryとして,大腸ステントまたは経肛門イレウス管挿入は広く行われているが,使い分けは明確ではない.特に,使い分けが主に担当医の裁量に依存する左側結腸癌において,両者の成績の比較は重要である.
【目的】
切除可能左側閉塞性結腸癌に対するbridge to surgeryとしての大腸ステントと経肛門イレウス管の成績を比較する.
【方法】
「関東域内の大腸癌手術症例に対する多施設共同研究グループ」のデータベース(K-SEER)を用いた.2015~2016年に17施設から3386例が登録されていた.このうち,遠隔転移を伴わない左側閉塞性結腸癌で(主座がD/S/RS),大腸ステントまたは経肛門イレウス管挿入後に根治術に至った53例を抽出した.
【結果】
ステント(S群)37例とイレウス管16例であった.患者背景では,S群で有意に下行結腸癌が多かった(22 vs 0%,p=0.04).また,cStage 3が多い傾向を認めたが(51 vs 25%,p=0.08),pStage 3としては同等であった(46 vs 50%).その他の患者背景に有意差は認めなかった.治療内容では,S群で有意に手術待機時間が長かった(21 vs 8日,p<0.001).しかし,有意に腹腔鏡手術率が高く(84 vs 38%,p=0.001),一時的人工肛門(8 vs 31%,p=0.031)および永久人工肛門(3 vs 19%,p=0.042)造設率も低かった.D3郭清率(92 vs 81%),郭清リンパ節個数(23 vs 21個),R0切除率(95 vs 100%),術後補助化学療法施行率(51 vs 44%)に有意差は認めなかった.短期成績では,手術時間は同等であったが(215 vs 241分),S群で有意に出血量が少なかった(10 vs 199 ml,p=0.008).さらに,Clavien-Dindo G3以上の合併症(5 vs 19%,p=0.13)と縫合不全(5 vs 19%,p=0.13)が少なく,術後在院日数(9 vs 11日,p=0.14)も短い傾向を認めた.長期成績では,5年生存率(83 vs 77%)と5年無再発生存率(59 vs 60%)に有意差は認めなかった.
【結語】
切除可能左側閉塞性結腸癌に対するbridge to surgeryとして,経肛門イレウス管のメリットは乏しく,基本的には大腸ステントを選択して良い可能性が示唆された.
切除可能閉塞性大腸癌に対するbridge to surgeryとして,大腸ステントまたは経肛門イレウス管挿入は広く行われているが,使い分けは明確ではない.特に,使い分けが主に担当医の裁量に依存する左側結腸癌において,両者の成績の比較は重要である.
【目的】
切除可能左側閉塞性結腸癌に対するbridge to surgeryとしての大腸ステントと経肛門イレウス管の成績を比較する.
【方法】
「関東域内の大腸癌手術症例に対する多施設共同研究グループ」のデータベース(K-SEER)を用いた.2015~2016年に17施設から3386例が登録されていた.このうち,遠隔転移を伴わない左側閉塞性結腸癌で(主座がD/S/RS),大腸ステントまたは経肛門イレウス管挿入後に根治術に至った53例を抽出した.
【結果】
ステント(S群)37例とイレウス管16例であった.患者背景では,S群で有意に下行結腸癌が多かった(22 vs 0%,p=0.04).また,cStage 3が多い傾向を認めたが(51 vs 25%,p=0.08),pStage 3としては同等であった(46 vs 50%).その他の患者背景に有意差は認めなかった.治療内容では,S群で有意に手術待機時間が長かった(21 vs 8日,p<0.001).しかし,有意に腹腔鏡手術率が高く(84 vs 38%,p=0.001),一時的人工肛門(8 vs 31%,p=0.031)および永久人工肛門(3 vs 19%,p=0.042)造設率も低かった.D3郭清率(92 vs 81%),郭清リンパ節個数(23 vs 21個),R0切除率(95 vs 100%),術後補助化学療法施行率(51 vs 44%)に有意差は認めなかった.短期成績では,手術時間は同等であったが(215 vs 241分),S群で有意に出血量が少なかった(10 vs 199 ml,p=0.008).さらに,Clavien-Dindo G3以上の合併症(5 vs 19%,p=0.13)と縫合不全(5 vs 19%,p=0.13)が少なく,術後在院日数(9 vs 11日,p=0.14)も短い傾向を認めた.長期成績では,5年生存率(83 vs 77%)と5年無再発生存率(59 vs 60%)に有意差は認めなかった.
【結語】
切除可能左側閉塞性結腸癌に対するbridge to surgeryとして,経肛門イレウス管のメリットは乏しく,基本的には大腸ステントを選択して良い可能性が示唆された.