講演情報
[PD3-6]結腸癌手術における腹腔鏡下体腔内吻合とその予後
井上 悠介, 足立 利幸, 三好 敬之, 川口 雄太, 小林 和真, 曽山 明彦, 足立 智彦, 金高 賢悟, 江口 晋 (長崎大学大学院移植・消化器外科学)
【はじめに】
近年,大腸癌手術時に体腔内吻合を行う施設が増加しているが,その安全性は明らかでない.当科では2011年より症例を選んで体腔内吻合を開始し,2021年以降はDST再建症例を除き体腔内吻合を基本手技とした.
【目的】
当科で行った体腔内吻合の安全性と予後を確認すること.
【対象と方法】
2018年1月~2024年3月の結腸癌手術症例から,他臓器合併切除症例,DST吻合症例,を除外した97例を対象とし,体腔内吻合群(IA群),体外吻合群(EA群)に分けて後法視的に検討を行った.検討項目は,患者背景,腫瘍学的因子,手術因子,短期予後,長期予後とした.
【結果】
IA群35例:EA群62例,男/女はIA群12/23:EA群35/27(p<0.05),年齢中央値はIA群73(46-94)歳:EA群74(42-96)歳,術前化学療法はIA群の4例に対して行われていたが(p<0.01),その他の術前因子,腫瘍学的因子に関しての差は認めなかった.再建に関しては,IA群が全例overlap吻合,EA群が全例FEEAで行われていた.リンパ節郭清度に差は認めなかったが,手術時間は,IA群282(167-416)分:EA群239(162-609)分(p<0.01),出血量は,IA群12(少量-594)g:EA群28(少量-723)g(p<0.01)であった.術後の合併症率や在院期間に差は認めなかったが,術後3日目のWBC,CRP,術後7日目のCRPはIA群で優位に高かった(p<0.01).術後の初回排便日はIA群2(1-6)日:EA群3(1-6)(p<0.01)と,IA群で短かった.また,体腔内吻合に利用したStaple洗浄液と吻合前後の腹腔内洗浄細胞診を確認したところ,35例中1例のみStaple洗浄液がclass IIIという結果であった.長期予後に関しては,IA群の観察期間中央値(406日),EA群の観察期間中央値(1316日)と差があるものの,IA群の再発は1例(肝転移再発),EA群の再発は5例(局所再発4例,肺転移再発1例)であった.
【考察】
当科における結腸癌手術時の体腔内吻合は安全に施行できていた.血液検査上は炎症反応が遷延する傾向があるものの,短期間で腸管運動が回復していた.引き続き長期予後に関する観察が必要である.
【結語】
結腸癌手術に対する腹腔鏡下の体腔内吻合は安全に施行可能であった.
近年,大腸癌手術時に体腔内吻合を行う施設が増加しているが,その安全性は明らかでない.当科では2011年より症例を選んで体腔内吻合を開始し,2021年以降はDST再建症例を除き体腔内吻合を基本手技とした.
【目的】
当科で行った体腔内吻合の安全性と予後を確認すること.
【対象と方法】
2018年1月~2024年3月の結腸癌手術症例から,他臓器合併切除症例,DST吻合症例,を除外した97例を対象とし,体腔内吻合群(IA群),体外吻合群(EA群)に分けて後法視的に検討を行った.検討項目は,患者背景,腫瘍学的因子,手術因子,短期予後,長期予後とした.
【結果】
IA群35例:EA群62例,男/女はIA群12/23:EA群35/27(p<0.05),年齢中央値はIA群73(46-94)歳:EA群74(42-96)歳,術前化学療法はIA群の4例に対して行われていたが(p<0.01),その他の術前因子,腫瘍学的因子に関しての差は認めなかった.再建に関しては,IA群が全例overlap吻合,EA群が全例FEEAで行われていた.リンパ節郭清度に差は認めなかったが,手術時間は,IA群282(167-416)分:EA群239(162-609)分(p<0.01),出血量は,IA群12(少量-594)g:EA群28(少量-723)g(p<0.01)であった.術後の合併症率や在院期間に差は認めなかったが,術後3日目のWBC,CRP,術後7日目のCRPはIA群で優位に高かった(p<0.01).術後の初回排便日はIA群2(1-6)日:EA群3(1-6)(p<0.01)と,IA群で短かった.また,体腔内吻合に利用したStaple洗浄液と吻合前後の腹腔内洗浄細胞診を確認したところ,35例中1例のみStaple洗浄液がclass IIIという結果であった.長期予後に関しては,IA群の観察期間中央値(406日),EA群の観察期間中央値(1316日)と差があるものの,IA群の再発は1例(肝転移再発),EA群の再発は5例(局所再発4例,肺転移再発1例)であった.
【考察】
当科における結腸癌手術時の体腔内吻合は安全に施行できていた.血液検査上は炎症反応が遷延する傾向があるものの,短期間で腸管運動が回復していた.引き続き長期予後に関する観察が必要である.
【結語】
結腸癌手術に対する腹腔鏡下の体腔内吻合は安全に施行可能であった.