講演情報

[WS2-9]Crohn病における腹腔鏡手術の短期成績と再手術に与える影響

杉山 洸裕1, 高木 徹1, 岩瀬 友哉1, 立田 協太1, 小嶋 忠浩1, 赤井 俊也1, 鳥居 翔2, 美甘 麻裕1, 深澤 貴子3, 倉地 清隆1, 竹内 裕也1 (1.浜松医科大学外科学第二講座, 2.浜松医科大学外科学第一講座, 3.磐田市立総合病院消化器外科)
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【背景】腹腔鏡手術の発展に伴いCrohn病でも腹腔鏡手術が浸透しつつある.Crohn病では複数回手術やStoma造設の可能性があるため,創の大きさは整容性以外にもStoma site選択や再手術時の癒着に影響する重要な点である.当科では腹腔鏡手術可能な症例では積極的に実施しており,後方視的に検討した.
【方法】2013~2023年の腸切除を伴うCrohn病当院手術延べ107例を対象に患者背景と短期成績を開腹および腹腔鏡手術について比較検討した.
【結果】男性80例,手術年齢中央値39歳であった.Montreal分類はA1:A2:A3が16:88:3,L1:L2:L3が29:7:71,B1:B2:B3が6:45:56,肛門病変は54例に認めた.前回手術歴(初回/開腹/腹腔鏡/Stoma造設)は開腹手術11/41/5/2例,腹腔鏡手術36/3/5/5例であった.術式(腹腔鏡/開腹)は回盲部切除34(24/10)例,吻合部切除を含む部分切除51(14/37)例,結腸全摘9(6/3)例,Miles13(5/8)例であった.いずれの術式でも開腹手術でB3,腹腔鏡手術でB2の症例が多かった.術後短期成績について回盲部切除:部分切除:結腸全摘:Milesで手術時間中央値(腹腔鏡/開腹)は220(218/257):219(190/233):300(325/249):395(449/374)分,出血量中央値(腹腔鏡/開腹)は125(72.5/175):225(75.5/259):170(80/250):650(199/987.5)ml,術後在院日数中央値(腹腔鏡/開腹)は13(12/16.5):16(10.5/18):17(18.5/17):25(18/27)日であった.合併症に差はなかった.非初回の腹腔鏡手術は前回腹腔鏡手術5/10例,開腹手術3/44例に実施された.
【考察】本検討では腹腔鏡手術は手術時間がやや長いが,少ない出血量と短い在院日数で短期成績は良好であった.また初回手術やStoma造設歴のみの症例は腹腔鏡手術の良い適応と考えられた.腹腔鏡手術後には再手術時も腹腔鏡手術可能な頻度が高く,複数回手術とStoma造設の可能性があるCrohn病では腹腔鏡手術で創を小さく保つことは有用である.一方で開腹手術は病状進行に伴う多発瘻孔や過去の手術での高度癒着に基づいて選択しており,本結果の解釈やCrohn病に対する腹腔鏡手術は慎重な判断を要する.開腹手術の選択要因である瘻孔や癒着は病状の進行も影響するため,適切な手術タイミングを今後検討する価値がある.