講演情報
[O1-3]直腸癌術後局所再発に対する重粒子線治療―スペーサー手術の検討―
水内 祐介1, 永吉 絹子1, 田村 公二1, 藤本 崇聡1, 久野 恭子1, 進藤 幸治1, 池永 直樹1, 仲田 興平1, 永井 俊太郎2, 大内田 研宙1, 中村 雅史1 (1.九州大学臨床・腫瘍外科, 2.北九州市立医療センター外科)
直腸癌において局所再発は比較的頻度の高い再発形式である.遺残無い外科的切除が第一選択だが,局所再発部位によってはR0切除がしばしば困難である.切除可能であっても他臓器合併切除を要する手術には高率に周術期合併症を認め,患者に大きな機能障害が残るだけでなく,周術期死亡も問題となる.2022年4月から大腸癌の骨盤内再発に対する重粒子線治療が保険適応となり,その治療成績と比較的低い有害事象に期待が持たれている.しかし重粒子線照射の際はその高い線量分布から隣接臓器との間に距離が必要となり,スペーサーが必要になることが多い.今回当科で施行した直腸癌局所再発に対するスペーサー手術について検討した.2013年10月から2024年1月に直腸癌局所再発に対する重粒子線治療の適応でスペーサー手術を施行した13例を対象に検討を行った.正中切開で開腹し腫瘍周囲を剥離,切除可能性を検討した後に,人工スペーサーにより腫瘍表面を被覆・固定した.大網による被覆や骨盤底形成が可能な症例では人工スペーサーは留置しなかった.(結果)男性 7例,女性 6例.平均年齢は64.8歳(43-75 歳).術式は非吸収スペーサー留置5例,吸収性組織スペーサー留置3例,大網充填2例,骨盤底形成2例であった.手術時間中央値は216分,出血量中央値は139gであった.術後在院日数は平均 11.3日.短期合併症としては,腸閉塞が1例,水腎症が1例認められた.全症例において重粒子線照射が可能であった.晩期合併症として非吸収スペーサーによる十二指腸穿孔を1例に,非吸収性スペーサー留置後2年後に骨盤死腔炎を認めた症例を1例に認めた.(考察)吸収性組織スペーサーを用いた直腸癌局所再発に対する重粒子線治療のためのスペーサー手術は安全で有効であると考えられた.