講演情報

[O16-7]合併症低減のための当院でのストーマ造設時の工夫と傍ストーマヘルニアのリスク因子の検討

吉敷 智和, 小嶋 幸一郎, 麻生 喜祥, 飯岡 愛子, 若松 喬, 本多 五奉, 片岡 功, 金 翔哲, 磯部 聡史, 代田 利弥, 深澤 智將, 後藤 充希, 須並 英二 (杏林大学医学部付属病院下部消化管外科)
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はじめに
ストーマの合併症には,重篤になるものや長期間ADLを低下させるものがある.当院で経験した重篤な早期合併症でストーマ周囲の壊死性筋膜炎があった.また,晩期合併症で頻度が多いものに傍ストーマヘルニア(PSH)がある.
 目的
早期合併症対策としての手技を考察し,晩期合併症発症リスクを抽出し対策を検討する.
 方法
壊死性筋膜炎発生に関しては筋膜固定手技を見直し提案する.PSHに関しては,定義をCT所見で人工肛門につながる腸管以外の脂肪織,小腸を腹壁外に認めた症例,また臨床上PSHと診断した症例とした.2018年1月から2021年12月までに人工肛門造設を行う手術を受けた140名を対象とした.各臨床的因子(術前,術後)がPSH発生に関与するリスク因子になるかを検討した.皮下脂肪,腹直筋の厚さの計測はCT(臍レベル)でおこなった.
 結果
 合併症対策として,ストーマ固定方法を工夫した手技のビデオを供覧する.腸管固定時の腸管損傷を避ける目的で,腸管固定時に3点固定法(真皮→腸管漿膜筋層→腸管断端側漿膜筋層)より2点固定分割法(真皮→腸管漿膜筋層,腸管漿膜筋層→腸管断端側漿膜筋層)を行っている.
 PHSに関して,20%(28/140)にPSHを認めた.観察期間は183(中央値 45-490)でった.年齢は66歳(中央値25-92),BMIは21.8(中央値13.6-40.0)であった.単孔式46例,双孔式94例,小腸ストマ44例,大腸ストマ96例であった.術前因子では多変量解析で「皮下脂肪2cm以上(ストマ造設側)」(p=0.006),「術前BMI25以上」(p=0.026)がリスク因子となった.術後因子では,「術後皮下脂肪増加(ストーマ対側)」が有意なリスク因子となった(p=0.005).
 考察
 3点固定から2点固定に分割することで,腸管壁や腸間膜肥厚症例などの腸管反転時に腸管へ負担をかけずに固定することができる.術前にBMI25以上,皮下脂肪2cm以上の症例はPSHの発生リスクであるため腹壁の固定に注意を要する.また,術後皮下脂肪増加となる場合もPSH発生のリスク因子となるため,術後の体型管理が必要と考えられた.