講演情報
[P19-1-4]急激な転帰を辿ったGranulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)産生下行結腸癌の1例
南浦 翔子, 吉川 幸宏, 鄭 充善, 辻村 直人, 野村 雅俊, 玉井 皓己 (独立行政法人労働者健康安全機構大阪ろうさい病院)
症例は79歳,男性.発熱,呼吸苦を主訴に当院救急外来受診となった.既往歴として糖尿病,胆管癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行していた.血液検査で白血球の著明な増加を認め,腹部造影CT検査で周囲に膿瘍形成を伴う下行結腸に造影効果のある腫瘤,縦郭リンパ節及び傍大動脈リンパ節腫大を認めた.炎症改善後に下部消化管内視鏡検査予定としていたが,保存的加療にて改善を認めなかったため,下行結腸癌疑い(cT4aN3M1a(LYM),cStageIVa),膿瘍形成の診断で,開腹左半結腸切除術,横行結腸人工肛門造設術を施行した.手術時間は5時間50分,出血量は4125mlであった.術後7日目に抜管したが,状態が悪化したため術後9日目に再挿管となった.その後,感染のコントロールは概ねついていたが,炎症反応高値が持続し全身状態増悪傾向となり,集中治療室を退室することなく術後27日目に原病死した.病理組織学的診断は低分化型腺癌で,免疫組織染色にてG-CSF陽性であり,G-CSF産生下行結腸癌(T4b(横行結腸)N1bM1a(LYM),StageIVa)であった.G-CSF産生腫瘍は感染徴候がないにも関わらず,白血球の著明な増加を認める疾患である.肺癌,胃癌,食道癌,胆嚢癌,甲状腺癌の順に頻度が高く,比較的多くの報告例を認めるが,大腸癌における報告例は少ない.本症例の様に急激な経過を辿り予後不良であることが多いとされており,白血球数が高値の大腸癌では,本疾患も鑑別診断として考慮する必要がある.また,G-CSF産生腫瘍に対する治療方法は未だ確立されていないことから,診断した場合には,外科的手術や化学療法の適応を慎重に検討することが重要である.今回我々は急激な転帰を辿ったG-CSF産生下行結腸癌の稀な1例を経験したので,若干の文献的考察を踏まえて報告する.