講演情報

[P11-1-6]確定診断を得るのに苦慮し切除生検にて診断し得た痔瘻癌3例の経験

三宅 祐一朗, 小野 朋二郎, 斎藤 徹, 久能 英法, 相馬 大人, 安田 潤, 弓場 健義, 根津 理一郎 (大阪中央病院外科)
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【はじめに】痔瘻癌は管外に増殖を示す特徴があり,確定診断のために繰り返し生検を要する症例に遭遇することがある.今回,針生検や部分生検では確定診断が得られず,全切除生検または広範囲の部分生検を施行し診断し得た痔瘻癌を3例経験したため報告する.
 【症例1】74歳男性.7年前より痔瘻を指摘されていた.肛門痛が出現したため近医を受診し深部痔瘻と診断され当院へ紹介された.MRI上,左坐骨直腸窩に4x4x3cm大の多嚢胞性腫瘤を認めた.悪性腫瘍を疑い硬結部を部分生検するも悪性所見を認めず深部痔瘻として根治術を施行した.坐骨直腸窩の腫瘤を切除する際にゼリー状の粘液を認め腫瘤の病理診断でMucinous adenocarcinomaと診断された.腹会陰式直腸切断術を施行され治癒切除となりStageIIaと診断された.
 【症例2】65歳男性.10年前より肛門部腫瘤があり増大したため近医を受診した.悪性腫瘍が疑われ生検を施行されるも悪性所見を認めず診断目的に当院へ紹介された.肛門部に6cm大の腫瘤を認め,MRI上,内部は顆粒集合様所見であった.CT上,明らかなリンパ節種大や他臓器の異常を認めなかった.部分生検を施行するも明らかな悪性所見を認めず全切除生検を施行した.病理診断でMucinous adenocarcinomaと診断され切除断端は陰性であった.追加切除を勧めたが拒否され経過観察の方針となった.
 【症例3】89歳男性.1ヶ月前からの肛門部腫脹と疼痛で近医を受診し肛門周囲膿瘍の診断で切開排膿術を施行されたがゼリー状粘液の排出を認めた.粘液の細胞診で悪性所見は認めなかったが悪性腫瘍を疑われ当院へ紹介となる.MRI上,肛門管左側に5x4x3cm大の隔壁を有する分葉状腫瘤を認めた.針生検を2度施行するも悪性所見は得られず全切除生検を施行した.病理診断でMucinous adenocarcinomaと診断され切除断端の一部に腫瘍の露出を認めた.追加切除を勧めたが拒否され,経過観察の方針となった.
 【結語】痔瘻癌を強く疑う症例に対し針生検や狭い範囲での切除生検で診断が得られなかった場合,全切除生検や広範囲の部分生検は有用なことがある.