講演情報

[P18-2-1]当院における閉塞性大腸癌の手術治療成績

伊藤 その, 馬場 裕信, 中島 啓, 根本 亮, 山﨑 嘉美, 赤須 雅文, 小林 建太, 光法 雄介 (草加市立病院外科)
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【背景】
当院では狭窄症状を有しかつ内視鏡が通過しない原発性大腸癌に対し,減圧後に待機的な根治切除を行っている.減圧方法は,盲腸癌には経鼻イレウス管,その他の結腸癌には大腸ステント,直腸癌には経肛門イレウス管を第一選択としている.当院における閉塞性大腸癌患者に対する外科的治療の現状と術後短期成績について検討した.
 【方法】
 2023年4月から2024年3月の間に当院で原発性大腸癌に対して原発切除を行った患者を対象とし,多発癌や穿孔例は除外した.術前減圧治療を要した症例を閉塞群,その他の症例を非閉塞群と定義し,臨床的特徴や手術成績を後方視的に検討した.
 【結果】
 対象は96例,うち閉塞群は18例(19%)であった.原発部位は右側結腸8例(44%),左側結腸6例(33%),直腸4例(22%)であり,非閉塞群と差はなかった(p=0.78).減圧方法は大腸ステント11例(61%),経肛門イレウス管2例(11%),経鼻イレウス管2例(11%),腸管安静3例(17%)で,減圧から手術までの期間中央値はそれぞれ39日,16日,10日,20日であった.大腸ステントの1例は減圧不良となり人工肛門造設が行われた.年齢中央値は閉塞群79歳,非閉塞群75歳であり(p=0.51),性別やBMIにも両群で差はなかった.術前腫瘍マーカーはCEA,CA 19-9ともに閉塞群で高値であった(p<0.01,p=0.01).閉塞群は全症例で低侵襲手術が行われ,腹腔鏡11例(61%),ロボット7例(39%)と,非閉塞群とアプローチに差はなかった(p=0.15).
 手術時間中央値は閉塞群264分,非閉塞群222分(p=0.15),出血量中央値は閉塞群18ml,非閉塞群10mlであった(p=0.67).Clavien-dindo grade 2以上の術後合併症は閉塞群1例(6%),非閉塞群9例(12%)に認めた(p=0.45).術後在院日数中央値は閉塞群9日,非閉塞群7日と(p=0.17),いずれも両群で差はなかった.
 閉塞群の病理学的深達度はすべてpT3以深であった(p<0.01).リンパ節転移は8例(44%)に認め,非閉塞群と有意差はなかった(p=0.07).
 【結語】
 手術時間・術後在院日数・出血量は閉塞群で若干長い傾向にあるが,当院における減圧方針による閉塞性大腸癌に対する外科的治療は低侵襲かつ安全に行われていた.今後,長期予後の検討も必要である.