講演情報
[O20-3]局所解剖に基づく横行結腸癌に対する#223リンパ節への系統的鏡視下アプローチ
賀川 義規1,2, 井上 彬1, 西沢 佑次郎1, 森本 祥悠1, 大里 祐樹1, 橋本 雅弘1, 進藤 希1 (1.大阪急性期・総合医療センター消化器外科, 2.大阪国際がんセンター消化器外科)
【はじめに】横行結腸癌に対する#223リンパ節を過不足なく郭清するには,リンパ流を意識した郭清範囲の設定(上縁:膵下縁,右縁:SMV右縁,左縁:SMA左縁,下縁:MCA根部と横行結腸間膜根)とバリエーションの多いGastro-colic trunk(GCT),accessory right colic vein(ARCV),Surgical trunk(ST),上腸間膜動静脈(SMA&SMV)ならびに中結腸動静脈(MCA&MCV)への戦略的なアプローチが必要である.我々はバリエーションが無く確認が容易な右胃大網静脈(RGEV),十二指腸,膵尾部下縁をランドマークとし,頭側からバリエーション豊富な血管を系統的に処理することで,最短距離で#223の上縁と右縁にアプローチする方法を採用している.
【方法】頭側アプローチで大網を切開し網嚢内に入り,膵臓下縁を確認する.横行結腸間膜前葉に頭側からアプローチし,胃結腸間膜内のRGEVを確認し,RGEVの中枢側に剥離を進めとGCTに至りGCTからバリエーション豊富に分枝するARCVは頭側から順に切離する.GCTを中枢側に進めるとSMVに至り,SMV右縁を頭側に剥離し#223の上縁である膵下縁に達する.膵下縁に沿って横行結腸間膜根を左側に切開し#223の左縁であるSMAの左縁に達する.SMVから分岐するMCVは周囲のリンパ節を郭清し根部で切離し,SMV右縁からSTに沿って#223の右縁のリンパ節郭清を行う.その後,尾側アプローチに移行し,横行結腸間膜を回結腸動静脈の根部からトライツ靭帯に向かって切離し#223の下縁を決定する.MCAは,尾側から根部で切離し#223の郭清を終了する.【結果】2020年4月から2023年4月までに36例の横行結腸癌に対してこのアプローチで拡大右半結腸切除術を施行した.手術時間の中央値は221分(153-353分),出血量の中央値は10ml(0-500ml).腹腔鏡手術が19例(手術時181分,出血量45ml),ロボット手術が17例(手術時210分,出血量0ml)であった.合併症はARCVからの出血を2例,術後イレウス1例認めた.開腹移行症例は認めなかった.【結語】横行結腸間膜のバリエーションが豊富な動静脈に解剖に基づき系統的にアプローチし時間短縮をはかる本方法は,過不足ない#223リンパ節郭清を定型化出来ると考える.
【方法】頭側アプローチで大網を切開し網嚢内に入り,膵臓下縁を確認する.横行結腸間膜前葉に頭側からアプローチし,胃結腸間膜内のRGEVを確認し,RGEVの中枢側に剥離を進めとGCTに至りGCTからバリエーション豊富に分枝するARCVは頭側から順に切離する.GCTを中枢側に進めるとSMVに至り,SMV右縁を頭側に剥離し#223の上縁である膵下縁に達する.膵下縁に沿って横行結腸間膜根を左側に切開し#223の左縁であるSMAの左縁に達する.SMVから分岐するMCVは周囲のリンパ節を郭清し根部で切離し,SMV右縁からSTに沿って#223の右縁のリンパ節郭清を行う.その後,尾側アプローチに移行し,横行結腸間膜を回結腸動静脈の根部からトライツ靭帯に向かって切離し#223の下縁を決定する.MCAは,尾側から根部で切離し#223の郭清を終了する.【結果】2020年4月から2023年4月までに36例の横行結腸癌に対してこのアプローチで拡大右半結腸切除術を施行した.手術時間の中央値は221分(153-353分),出血量の中央値は10ml(0-500ml).腹腔鏡手術が19例(手術時181分,出血量45ml),ロボット手術が17例(手術時210分,出血量0ml)であった.合併症はARCVからの出血を2例,術後イレウス1例認めた.開腹移行症例は認めなかった.【結語】横行結腸間膜のバリエーションが豊富な動静脈に解剖に基づき系統的にアプローチし時間短縮をはかる本方法は,過不足ない#223リンパ節郭清を定型化出来ると考える.