講演情報
[P18-1-1]左結腸動脈が根部近傍で辺縁動脈へ移行するpersistent descending mesocolonの1例
阿尾 理一1, 神藤 英二1, 西川 誠1, 藤澤 重元1, 森 庄平1, 井出 明日馬1, 一尾 幸輝1, 猛尾 弘照2 (1.自衛隊中央病院外科, 2.自衛隊中央病院病理診断科)
76歳,女性.検診で便潜血陽性を指摘され,近位にて大腸内視鏡検査を施行し,直腸癌の診断で当院へ紹介された.精査の結果,RSK,cT2 cN0 cM0 cStage Iの診断で,腹腔鏡下高位前方切除術(D3郭清)を予定した.手術時,腹腔内を観察したところ,下行結腸からS状結腸が右側へ偏位し,骨盤右側の回盲部および小腸間膜に広範に癒着していたことから,persistent descending mesocolon(PDM)と診断した.腹腔内にて下腸間膜動脈根部をクリッピング切離し,続いて下腸間膜静脈,左結腸動脈の順に切離した.体外操作へと移行し,腫瘍の口側10cmの部分で腸間膜を処理しようとしたところ,左結腸動脈とS状結腸動脈第1枝とをつなぐ辺縁動脈が欠損し,左結腸動脈根部がすぐに辺縁動脈へ移行していることが判明した.腸管壊死を防ぐため,左結腸動脈を切離した高さで下行結腸を切離し,脾彎曲を授動したのちに吻合を実施した.PDMは発生過程において下行結腸間膜が後方および外側の壁側腹膜と癒合しない固定異常と定義され,その頻度は1.2~2.4%と比較的まれである.PDMを有する症例では,下腸間膜動脈の放射状分枝を特徴とした血管走行異常を認めることがあるが,その中で,左結腸動脈根部がすぐに辺縁動脈となる症例は極めてまれである.文献的考察を加えて報告する.