講演情報

[P17-1-4]Up-front手術後に免疫チェックポイント阻害剤療法を施行したMSI-High進行結腸癌の一例

清水 忠朗1,2, 天野 隆皓1, 五味 邦之1, 武井 理紗3, 代田 智樹1, 牧野 安楽能1, 島田 宏1, 丸山 起誉幸1, 三原 基弘1, 梶川 昌二1 (1.諏訪赤十字病院外科, 2.信州大学医学部付属病院, 3.諏訪赤十字病院消化器内科)
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【背景】高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high 以下MSI-H)またはDNAミスマッチ修復機能欠損(mismatch repair deficiency 以下dMMR)を示す大腸癌に対しては免疫チェックポイント阻害剤の有効性が証明され,現在ではMSI-H/dMMR切除不能進行・転移大腸癌に対して一次治療から投与が可能である.
 【症例】症例は80歳,女性.右腹部腫瘤を主訴に近医を受診され,精査のため当院へ紹介された.血液検査でCEA:9.8 ng/mlを認め,下部消化管内視鏡検査で横行結腸中部にスコープ通過不能の全周性の2型病変を認めた.造影CTでは肝彎曲から横行結腸中部に6cm大の腫瘤を認め,腸管傍リンパ節から,右結腸根リンパ節,中結腸根リンパ節,及び幽門下リンパ節にも腫大を認めた.また,肝S1,S5,S8に低吸収腫瘍を認め,肝転移を疑う所見であったが,腹膜播種,肺転移を疑う所見は認めなかった.以上より,横行結腸癌cT4b(PER),N2b,M1b(HEP,LYM),cStageIVbと診断,2023年7月に腹腔鏡補助下拡大結腸右半切除術を施行した.術中所見では腹壁及び結腸間膜に浸潤を認めた.また右胃大網動静脈周囲,幽門下リンパ節が一塊となっており,この部位に関しては血管処理,右側結腸の受動を完了させた後,開腹操作にて直視下で切除した.また,転移リンパ節は膵実質へ浸潤しており,自動縫合機を用いて膵を部分切除した.手術時間は6時間25分,出血量は200gであった.術後に軽度の乳び腹水,尿路感染症を認めたものの術後13日目に退院となった.術後4週後にCT検査を施行し,肝転移が増大,大動脈周囲リンパ節転移も認め,術後6週後よりPembrolizumab療法を開始した.術後8か月の経過で有害事象は発生せず,腫瘍マーカーは陰性化し,転移巣はPRを維持している.
 【結語】有症状のため原発巣を切除したMSI-High進行結腸癌の切除不能遠隔転移に対する免疫チェックポイント阻害剤での加療経過を報告する.