講演情報
[SR5-2]臓器横断的視点による左側横行結腸癌に対するリンパ節郭清手技
工藤 道弘1,2, 山里 有三1, 樋上 翔一郎1, 福田 賢一郎1, 山本 芳樹1, 清水 義博1 (1.京都岡本記念病院消化器外科, 2.京都府立医科大学大学院医学研究科消化器外科)
【緒言】
上腸間膜動脈(SMA)のリンパ流に対するリンパ節郭清手技は,大腸や膵臓手術で必要となるが,解剖学的に複雑,かつ神経,リンパ管損傷による消化管機能不全,リンパ/乳び漏などを生じる可能性があり,十分な理解と経験を元に手術を行う必要がある.当院では下部消化管専門医が膵手術も担当しており,臓器横断的視点を取り入れて横行結腸癌に対するリンパ節郭清ができていると考えている.そこで他術式,特に膵頭十二指腸切除時に観察されるSMA,腹部大動脈,横行結腸間膜の視野と,当院で行っている左側横行結腸癌に対する術式を相対しながら手術ビデオを供覧したい.
【手術手技】
膵頭十二指腸切除(PD)では,膵頭部癌ではkocherの授動時,16番リンパ節をある程度膵側につける様に腹部大動脈前面(Ao)から剥離,横行結腸間膜尾側より下腸間膜静脈(IMV)と空腸起始部との間を切開し,先行して剥離したAoの前面と交通させる.この視野は近年報告されるIMVに沿いAoにむかうリンパ流と,SMA側のリンパ流の境界を剥離することになると想定される.
SMAの郭清が要求される左側横行結腸癌(中結腸動脈系が支配血管)では,PDの知識を活かし空腸起始部近傍で横行結腸間膜と小腸間膜各々の神経や脂肪を認識しながらSMAの左側面を確認した上で,必要な部位のリンパ節を郭清し,血管を結紮することとしている.
【成績】2023年4月-2024年3月までの大腸癌切除例110例の内,5例に中結腸領域をfeederとする左側横行結腸癌を認めた,2例が副中結腸動脈を支配血管で両症例ともに並走する静脈がIMVに流入していた.3例が中結腸動脈左枝,腫瘍方向に向かう静脈がIMVに合流する症例が1例,MCVに合流する症例を2例認めた.術者,助手全員でPDの視野を共有し横行結腸癌にfeedbackした上で手術を行った結果,SMAの位置やリンパ流の理解度が深まったとの意見が多かった.一方でリンパ管の結紮については改善の余地があり,2例でリンパ漏,乳び腹水が生じていた(Clavien-DIndo:I).
【結語】
PDの経験は左側横行結腸癌のリンパ節郭清に対してより高い解剖学的認識を与えると考えられた.しかしながらリンパ流については未だ不明な点が多くさらなる解明が望まれる.
上腸間膜動脈(SMA)のリンパ流に対するリンパ節郭清手技は,大腸や膵臓手術で必要となるが,解剖学的に複雑,かつ神経,リンパ管損傷による消化管機能不全,リンパ/乳び漏などを生じる可能性があり,十分な理解と経験を元に手術を行う必要がある.当院では下部消化管専門医が膵手術も担当しており,臓器横断的視点を取り入れて横行結腸癌に対するリンパ節郭清ができていると考えている.そこで他術式,特に膵頭十二指腸切除時に観察されるSMA,腹部大動脈,横行結腸間膜の視野と,当院で行っている左側横行結腸癌に対する術式を相対しながら手術ビデオを供覧したい.
【手術手技】
膵頭十二指腸切除(PD)では,膵頭部癌ではkocherの授動時,16番リンパ節をある程度膵側につける様に腹部大動脈前面(Ao)から剥離,横行結腸間膜尾側より下腸間膜静脈(IMV)と空腸起始部との間を切開し,先行して剥離したAoの前面と交通させる.この視野は近年報告されるIMVに沿いAoにむかうリンパ流と,SMA側のリンパ流の境界を剥離することになると想定される.
SMAの郭清が要求される左側横行結腸癌(中結腸動脈系が支配血管)では,PDの知識を活かし空腸起始部近傍で横行結腸間膜と小腸間膜各々の神経や脂肪を認識しながらSMAの左側面を確認した上で,必要な部位のリンパ節を郭清し,血管を結紮することとしている.
【成績】2023年4月-2024年3月までの大腸癌切除例110例の内,5例に中結腸領域をfeederとする左側横行結腸癌を認めた,2例が副中結腸動脈を支配血管で両症例ともに並走する静脈がIMVに流入していた.3例が中結腸動脈左枝,腫瘍方向に向かう静脈がIMVに合流する症例が1例,MCVに合流する症例を2例認めた.術者,助手全員でPDの視野を共有し横行結腸癌にfeedbackした上で手術を行った結果,SMAの位置やリンパ流の理解度が深まったとの意見が多かった.一方でリンパ管の結紮については改善の余地があり,2例でリンパ漏,乳び腹水が生じていた(Clavien-DIndo:I).
【結語】
PDの経験は左側横行結腸癌のリンパ節郭清に対してより高い解剖学的認識を与えると考えられた.しかしながらリンパ流については未だ不明な点が多くさらなる解明が望まれる.