講演情報
[R3-1]臨床病期II/III期下部直腸癌に対するICGを用いた側方センチネルリンパ節生検の予後への影響
末田 聖倫, 安井 昌義, 西村 潤一, 賀川 義規, 北風 雅俊, 森 良太, 久保 維彦, 網崎 正孝, 牛丸 裕貴, 益池 靖典, 菅生 貴仁, 向井 洋介, 柳本 喜智, 小松 久晃, 金村 剛志, 後藤 邦仁, 和田 浩志, 大森 建, 宮田 博志, 大植 雅之 (大阪国際がんセンター消化器外科)
【はじめに】センチネルリンパ節生検は,原発巣からリンパ管を通じて最初に到達するリンパ節に潜伏している腫瘍細胞を検出するという概念である.我々は以前に臨床的II/III期の下部直腸癌に対するインドシアニングリーン(ICG)ガイド下側方センチネルリンパ節生検の安全性と有効性を報告した.しかし,ICGを用いた側方センチネルリンパ節生検が腫瘍学的転帰に及ぼす影響についてはほとんど知られていない.本研究の目的は,側方センチネルリンパ節生検が予防的側方リンパ節郭清と比較して腫瘍学的転帰に及ぼす影響を評価することである.【対象と方法】2010年1月から2020年12月までの期間に側方センチネルリンパ節生検または予防的側方リンパ節郭清(非側方センチネルリンパ節生検)を行なった臨床病期II/III期の下部直腸癌症例を対象とした.主要評価項目は,5年累積局所再発発生率とした.副次的評価項目は,癌特異的生存率,全生存率,無再発生存率,無局所再発生存率,無遠隔再発生存率とした.【結果】対象症例150人中79人が側方センチネルリンパ節生検を受けた.この79例のうち,センチネルリンパ節生検が陽性であった4例に対して側方リンパ節郭清術を施行した.側方センチネルリンパ節生検が陰性であった75例では予防的側方リンパ節郭清は省略した.観察期間中央値は61.0ヵ月(1.3-143.2ヵ月)であった.全再発率は30.7%(46例)で,局所再発率は12.0%(18例)であった.局所再発の内訳は,側方リンパ節再発が2.6%,骨盤中心部再発が9.4%であった.累積局所再発率,癌特異的生存率,全生存率,無再発生存率,無局所再発生存率,無遠隔再発生存率においては両群間に有意差は認められなかった.【結語】側方センチネルリンパ節生検群と予防的側方リンパ節郭清(非側方センチネルリンパ節生検)群で腫瘍学的転帰は同等であった.従って,ICGガイド下側方センチネルリンパ節生検は予防的側方リンパ節郭清の適応を決定しうる可能性があると考えられた.