講演情報

[R10-4]大腸癌に対する骨盤内臓全摘術後の回腸導管の長さが腎機能低下に与える影響

谷田部 悠介, 賀川 弘康, 塩見 明生, 眞部 祥一, 山岡 雄祐, 田中 佑典, 笠井 俊輔, 額田 卓, 森 千浩, 島野 瑠美, 高嶋 祐助, 坂井 義博, 石黒 哲史, 辻尾 元, 横山 希生人, 八尾 健太 (静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景】回腸導管の長期的な合併症に腎機能低下がある.腎臓から尿中に排泄された水素イオンが回腸導管の粘膜から吸収されることで代謝性アシドーシスを引き起こし,腎細胞障害を生じるといわれている.回腸導管が長い場合,尿の再吸収量が増え,腎機能低下につながると考えられるが,回腸導管の長さと骨盤内臓全摘術後の腎機能低下の関係を検討した報告はない.
【目的】大腸癌に対する骨盤内臓全摘術後の腎機能低下と回腸導管の長さの関係を検討すること.
【方法】2008年から2018年までに当科で大腸癌に対する骨盤内臓全摘術を行い,術後5年以上のフォローアップを行った45例のうち,腎手術の既往のある症例を除外した43例を対象とした.対象患者について患者背景,回腸導管の長さ,術前から術5年までの血清Cre値,eGFRを抽出し,術前と比較し術後5年での30%のeGFR低下(Kidney function decline,KFD)率を評価した.回腸導管の長さは,SYNAPSE VINCENT(Fujifilm, Japan)を使用して術後のCT画像(5mm厚)から計測した.当科では回腸導管は15-20cmの回腸を使用して作成しており,回腸導管の長さが20cm以下をshort-IC(ileal conduit,回腸導管)群,20cmを超えるものをlong-IC群とした.
【結果】回腸導管の長さは中央値24.4cm.short-IC群/long-IC群:14例(33%)/29例(67%).患者背景は年齢,性別,BMI>25,ASA-PS,糖尿病,高血圧,喫煙歴,術前eGFR,術前化学療法,原発または再発腫瘍に統計学的有意差なし.術前化学放射線療法はshort-IC vs long-IC:5例(33%)vs 1例(4%),p=0.01であった.手術および腫瘍背景としては,逆蠕動の回腸導管,予防的回腸人工肛門の造設,術後在院日数,術後補助化学療法,腫瘍再発,腫瘍再発に対する化学療法に有意差はなかった.KFD率は2例(14%)vs 15例(51%),p=0.02であった.その他の回腸導管関連合併症としては,水腎症は2例(14%)vs 3例(10%),p=1.00,複数回の尿路感染症は1例(7%)vs 5例(17%),p=0.65,傍ストーマヘルニアは1例(7%)vs 3例(10%),p=1.00であった.
【結論】回腸導管が長い群で有意に腎機能低下がみられた.回腸導管を必要最小限の長さにすることで腎機能低下のリスクを下げられる可能性がある.