講演情報

[SY1-7]高齢者の潰瘍性大腸炎関連大腸癌における臨床病理学的特徴と予後を検証し,外科治療の意義を探る~炎症性腸疾患合併消化管癌臨床病理学的研究・副次解析結果~

永吉 絹子1, 水内 裕介1, 藤本 崇聡1, 田村 公二1, 中村 雅史1, 岡林 浩二2, 内野 基3, 池内 浩基3, 野口 竜剛4, 石原 聡一郎4, 味岡 洋一5, 杉原 健一6 (1.九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科, 2.慶應義塾大学医学部一般・消化器外科, 3.兵庫医科大学炎症性腸疾患外科, 4.東京大学医学部腫瘍外科・血管外科, 5.新潟大学医学部臨床病理学分野, 6.東京科学大学腫瘍外科)
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背景と目的:潰瘍性大腸炎関連大腸癌(UAC)は長期罹患患者に多く見られ,高齢患者も増加している.UACに対する治療は大腸全摘が標準術式であり,高齢患者には適応が難しい場合もある.今回我々は炎症性腸疾患合併消化管癌データベースを用いて,高齢患者におけるUACの特性や外科治療成績,予後を明らかにし,至適な外科治療を検証することを目的とした.対象:データベースよりUAC1222例を抽出し,適格症例1086例を解析対象とした.方法:65歳以上を高齢群(248例22.8%),65歳未満を非高齢群(838例77.2%)に分け,臨床病理学的特徴,周術期成績,予後を比較検討した.さらに全摘群と区域切除群に分け,年齢別のサブグループ解析を行った.結果:背景では非高齢群と比べ高齢群では,慢性持続型が多く未分化型・脈管浸潤が有意に少なかった.外科的切除を施行した1024例では,より多くの高齢患者が全摘術の代わりに区域切除を受けていたが(30.4%vs13.9%,P<0.0001),完全切除は高齢群に多かった(98.6%vs94.8%,P=0.02).Stage0-III患者950例のうち119例(12.5%)に再発を認め,高齢群は非高齢群よりも再発が少なかった(9.0%vs13.6%,P=0.07).5年無再発生存率(5yr-RFS),全生存率(5yr-OS)は2群間で差はなかったが,(5yr-RFS;89.3% vs. 86.6% P=0.24,5yr-OS;88.8% vs. 89.6%,P=0.50),5年疾患特異的生存率(5yr-DSS)が高齢群では非高齢群と比べて有意に良好であった(5yr-DSS;94.7% vs. 91.0%,P=0.04).多変量解析では区域切除は両群に共通する独立した再発リスク因子であった.高齢UACにおけるサブグループ解析では区域切除群は全摘群と比較し5yr-RFSは不良であったが,5yr-DSS・5yr-OSに差は認めなかった.一方で非高齢UACでは区域切除群は全摘群と比べ5-yrRFS・5yr-DSS・5-yrOSいずれも予後不良であった.
 考察:高齢UAC患者では再発予後不良因子が少なく,術後再発はあるが非高齢群と比べて大腸癌関連予後は良好であった.大腸全摘術はUACの標準治療として確立されているが,高齢患者では術後のQOLや生命予後を考慮し区域切除などの代替術式の選択も認容されると考えられた.