講演情報
[P12-1-2]当院における80歳以上の高齢者に対する大腸癌手術の検討
郡司掛 勝也, 座主 真衣佳, 一宮 佑輔, 石林 健一, 淺川 哲也, 山口 貴久, 大畠 慶直, 寺井 志郎, 北村 祥貴, 角谷 慎一, 伴登 宏行 (石川県立中央病院消化器外科)
【背景】高齢化社会が進み,80歳以上の高齢者に対する大腸癌手術の機会が増加することが予想される.高齢者では,併存疾患を有する場合や主要臓器の機能が低下している場合が多く,治療方針に慎重な検討が必要である.今回,当院における80歳以上の高齢者大腸癌手術症例について検討した.【対象・方法】2021年1月から2023年12月までに当院で施行した80歳以上の大腸癌手術126例を対象とし,患者背景,手術因子,術後合併症について検討した.【結果】年齢84(80-97)歳.男性52例,女性74例であった.BMI 22.8(14.7-36.7),ASA-PS 1/2/3/4=0/50/76/0例,併存疾患は,高血圧/心疾患/糖尿病/脳血管障害=67/38/28/21例であった.他の悪性腫瘍の既往・併存は26例に認めた.腫瘍部位は盲腸/上行結腸/横行結腸/下行結腸/S状結腸/直腸=14/28/20/7/29/28例であった.腹腔鏡手術は98例,開腹手術は28例であった.手術時間は212(41-479)分,出血量は50(1-420)mlであった.術後合併症を認めた症例は32例(25.4%)であり,Clavien-Dindo 分類 Grade3以上の術後合併症は6例(4.8%)に認めた.術後在院日数は12(3-33)日であった.pStage0/I/II/III/IV=4/24/40/42/15例であり,Stage0~IIIでR0切除は106例(96.3%)であった.術後補助化学療法を施行したのは16例であった.観察期間は295(10-1071)日であり,再発は9例に認めた.再発に対する治療を施行したのは2例(手術1例,化学療法1例)であった.腹腔鏡手術と開腹手術での比較では,腹腔鏡手術で手術時間が長く,在院日数が短い結果であった.合併症の頻度に差は認めなかった.【考察】高齢者では,ASA-PS 3以上の症例が半数を占めており,ほとんどの症例が併存疾患を有していた.全身状態や腫瘍条件により,開腹手術を選択した症例もあるが,多くは腹腔鏡手術が選択されており,合併症の頻度も差がないことから,高齢者の大腸癌に対しても腹腔鏡手術は安全に施行可能であると考えられる.【結語】高齢者の大腸癌に対しては,全身状態などを考慮し治療方針を検討することにより,安全に手術加療は可能と考えられた.