講演情報

[R12-3]直腸癌における,MRIで診断した壁外静脈浸潤(mrEMVI)と術前放射線化学療法(nCRT)との関係性と予後

阪中 俊博, 岩本 博光, 松田 健司, 三谷 泰之, 中村 有貴, 村上 大輔, 竹本 典生, 田宮 雅人, 兵 貴彦, 下村 和輝, 上田 勝也, 川井 学 (和歌山県立医科大学外科学第2講座)
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【はじめに】
 近年,直腸癌において,MRIで診断した壁外静脈浸潤(mr extramural venous invasion(mrEMVI))が予後不良因子であることが多数報告されている.本研究では術前放射線化学療法(neoadjuvant chemoradiotherapy(nCRT))を施行した症例の初診時のMRI検査においてのmrEMVIの有無とnCRTを施行した後のmrEMVIの有無を評価し,予後との関連を検討した.
 【対象と方法】
 2010年1月から2018年12月の期間で,当院において根治切除術を行ったstageIVを除いた直腸癌186例の内,nCRTを施行した75例を対象とした.
 mrEMVIについては,放射線専門医2名と共に,対象症例の初診時とnCRT後のMRI像よりmrEMVI スコアリングシステムを用いmrEMVIの有無を評価した.
 【結果】
 初診時にmrEMVIが陽性であった症例は75例中の33例(42%)であり,nCRT後にmrEMVIが陽性であった症例は14例(19%)であった.19例において,mrEMVIが陰性化を来した.
 予後に関しては,初診時にmrEMVIが陽性であった症例群で,nCRTを施行した後にmrEMVIが陰性化した症例はmrEMVIが陽性のまま残存していた症例と比較したところ,有意に予後が良好であった.
 【結語】
 直腸癌において,mrEMVI 陽性症例に対し,nCRTを施行することで,mrEMVIの陰転化を来たす症例があり,陰転化した症例はmrEMVIが残存していた症例と比較し有意に予後良好であった.
 初診時のmrEMVI症例に対し,nCRTを施行することで予後を改善することが示唆された.また,nCRTを施行したのちに,mrEMVIが残存した症例は予後不良のため,術後補助化学療法を行うことで予後を改善させる可能性がある.