講演情報
[R17-4]女性の前方痔瘻に関する検討
花田 圭太1, 渡部 晃大1,2, 加川 隆三郎2 (1.洛和会音羽病院外科, 2.洛和会音羽病院肛門科)
【はじめに】
これまで肛門の前方では浅会陰横筋と球海綿体筋が合流し会陰腱中心を形成することが報告されてきたが,我々は肛門部MRIの3D解析から,浅会陰横筋と球海綿体筋が会陰腱中心に停止するのではなく,浅外肛門括約筋の前側方に合流することを報告した(消外39,2016).また,近年,剖検例の解析において,浅会陰横筋と球海綿体筋が,浅外肛門括約筋の前側方に合流,さらに左右の浅会陰横筋は浅外肛門括約筋の前方で連続していることも報告された(Anat Sci Int. 95,2020).男性と異なる会陰筋群の構造は,女性に前側方の痔瘻が多いことの一因と考えており,今回,女性の前方痔瘻の進展形式を検討することとした.
【方法】
2013年から2022年までの10年間に,当院で全身麻酔下に手術した女性の痔瘻症例101例について後方視的に解析した.術前のMRI所見を参考に最終的には手術所見で瘻管の走行を確認し分類した.
【結果】
女性の痔瘻症例101例のうち,前側方の原発口由来(3時,9時方向の原発口由来を除く)の痔瘻は49例(48.5%)であった.そのうち浅会陰横筋経路痔瘻は19例(38.8%),球海綿体筋経路痔瘻は8例(16.3%),II型痔瘻は19例(38.8%),分類不能は3例(6.1%)であった.浅会陰横筋経路痔瘻,球海綿体筋経路痔瘻に対する手術は,2次口から瘻管の剥離を開始したのち,各筋肉の筋束に沿って瘻管を剥離,さらに浅外肛門括約筋から可及的に瘻管を剥離,瘻管に切開を加えて内腔を確認,原発口にゴム輪を通し,最小の距離,組織量でseton法を行うminimal seton手術を施行した.浅会陰横筋経路痔瘻,球海綿体筋経路痔瘻 合計27例で,治癒を確認できたのは23例,治癒が確認できなかった(外来フォローが途絶えた)症例は4例であった.
【結語】
女性の前方に生じた筋間膿瘍は,前側方で浅外肛門括約筋に合流している浅会陰横筋,球海綿体筋内を,その筋束の方向に従って進展することが多いと考えられた.浅会陰横筋,球海面体筋の筋束を意識した非侵襲的な手術が望まれる.
これまで肛門の前方では浅会陰横筋と球海綿体筋が合流し会陰腱中心を形成することが報告されてきたが,我々は肛門部MRIの3D解析から,浅会陰横筋と球海綿体筋が会陰腱中心に停止するのではなく,浅外肛門括約筋の前側方に合流することを報告した(消外39,2016).また,近年,剖検例の解析において,浅会陰横筋と球海綿体筋が,浅外肛門括約筋の前側方に合流,さらに左右の浅会陰横筋は浅外肛門括約筋の前方で連続していることも報告された(Anat Sci Int. 95,2020).男性と異なる会陰筋群の構造は,女性に前側方の痔瘻が多いことの一因と考えており,今回,女性の前方痔瘻の進展形式を検討することとした.
【方法】
2013年から2022年までの10年間に,当院で全身麻酔下に手術した女性の痔瘻症例101例について後方視的に解析した.術前のMRI所見を参考に最終的には手術所見で瘻管の走行を確認し分類した.
【結果】
女性の痔瘻症例101例のうち,前側方の原発口由来(3時,9時方向の原発口由来を除く)の痔瘻は49例(48.5%)であった.そのうち浅会陰横筋経路痔瘻は19例(38.8%),球海綿体筋経路痔瘻は8例(16.3%),II型痔瘻は19例(38.8%),分類不能は3例(6.1%)であった.浅会陰横筋経路痔瘻,球海綿体筋経路痔瘻に対する手術は,2次口から瘻管の剥離を開始したのち,各筋肉の筋束に沿って瘻管を剥離,さらに浅外肛門括約筋から可及的に瘻管を剥離,瘻管に切開を加えて内腔を確認,原発口にゴム輪を通し,最小の距離,組織量でseton法を行うminimal seton手術を施行した.浅会陰横筋経路痔瘻,球海綿体筋経路痔瘻 合計27例で,治癒を確認できたのは23例,治癒が確認できなかった(外来フォローが途絶えた)症例は4例であった.
【結語】
女性の前方に生じた筋間膿瘍は,前側方で浅外肛門括約筋に合流している浅会陰横筋,球海綿体筋内を,その筋束の方向に従って進展することが多いと考えられた.浅会陰横筋,球海面体筋の筋束を意識した非侵襲的な手術が望まれる.