講演情報

[P19-1-2]直腸癌低位前方切除後の異時性横行結腸癌に対して中結腸動脈温存横行結腸切除術を行った1例

高原 文治1, 高塚 聡2, 成田 公昌2 (1.京丹後市立弥栄病院総合診療科, 2.京丹後市立弥栄病院外科)
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【緒言】高齢化が進むにつれて,異時性多発大腸癌の症例を経験する機会が増えてきている.今回われわれは,直腸癌に対する低位前方切除術後の患者に発生した横行結腸癌に対して,中結腸動脈温存横行結腸切除術を施行した症例を経験したので報告する.【症例】83歳,女性.30年前に他院で直腸癌に対して低位前方切除術を受けていた.発熱と一過性意識消失発作のため当院に救急搬送された.貧血の精査にて進行横行結腸癌と診断された.腹部造影CT,3D-CT angiographyでは下腸間膜動脈は根部で処理されており,下行結腸から直腸吻合部までの左側結腸は中結腸動脈からの血流支配を受けていた.また,横行結腸癌の支配動脈は中結腸動脈左枝で,221番,222番リンパ節が軽度腫大していた.根治性を求めた中結腸動脈を処理するリンパ節郭清を行うと,左側結腸を直腸吻合部まで全て切除する必要があり,高齢患者に対して過大侵襲であり,縫合不全の危険性も増大すると考えられたため,中結腸動脈を温存する縮小手術を予定した.上腹部正中切開にて開腹し,まず術前CTにて指摘された221番,222番リンパ節をサンプリングした.術中迅速病理診断にて転移陰性が確認できたため,支配動脈である中結腸動脈を温存したD2リンパ節郭清を行った.引き続きICG蛍光法によって腸管血流を確認して,横行結腸部分切除術を行った.切除標本の病理診断はtype2,tub2,pT3-SS,Ly0,V0,pN0,pM0,pR0,pCurA,pStageIIaであった.術後経過は良好で,合併症無く14日目に退院した.【考察】自験例では高齢の異時性横行結腸癌患者に対して,手術侵襲を低減しつつ,根治性を損なわないように,中結腸動脈を温存した横行結腸切除術及びD2リンパ節郭清を選択した.異時性多発大腸癌を手術する場合,初回手術時のリンパ節郭清に伴う血管処理の状況を把握しておくことが重要で,術前の3D-CT angiographyが非常に有用であると考えられた.さらに縫合不全を回避するために,術中のICG蛍光法による血流評価も重要であることが示唆された.